海外邦人事件簿|Vol.26 日本人を陥れる日本人

日本人観光客に溢れかえるリゾート地であればいざしらず、不案内な土地で偶然日本人にあったら、なぜか懐かしい気持ちがするものです。中には、それがきっかけで「旅は道連れ」となることもあるでしょう。海外での日本人との出会いは旅の醍醐味でもあり、思い出を何倍にもふくらませるものです。

しかし、こうした出会いにも落とし穴があります。海外で日本人をターゲットにする犯罪者は何も外国人だけではありません。日本人自身が日本人を騙す、危害を加えるということもあるのです。

『ヨーロッパを旅行中の男性Bさん。観光地の広場で休息を取っていたところ、日本人女性が近づいてきて、「スリにあって、所持金をなくしてしまった。日本に帰ったら必ず返すので、お金を貸してほしい」と今にも泣きそうな表情で声をかけてきた。Aさんは同情し、その日本人女性に帰りの航空賃を貸した。Aさんが帰国して、その日本人女性から聞いていた連絡先に電話したがつながらない。ここでAさんは騙されたことにやっと気付いた。』

「スリにあって、所持金をなくしてしまった。日本に帰ったら必ず返すので、お金を貸してほしい」

『東南アジアを旅行中の男性Dさん。街を散策中、日本人男性Eに声をかけられ、話をするうちに意気投合し、公園でしばし休憩をすることにした。そこでEから勧められたコーヒーを飲むうちに睡魔に襲われ、気がついたときは身ぐるみはがされ、無一文になっていた。(日本人Eは最初から計画的にDさんに近づき、コーヒーに睡眠薬を混入していた)』

『オーストラリアにワーキングホリデーで滞在中の女性Aさん。仕事先で同じワーキングホリデーの日本人男性に偶然出会い仲良くなった。その男性から、「安い宿があるから来ない?」と持ちかけられた。Aさんは所持金も少なくなっていたことから誘いに応じて件の宿に移った。紹介されたところは、ワーキングホリデーの渡航者やバックパッカーの常宿で、件の男性の他にも数人の日本人が宿泊していた。そこで数人の日本人から麻薬を勧められ、つい興味本位で手を出してしまった。しばらく滞在を続けていたところ、警察の捜査が入り、現行犯逮捕された。』

数人の日本人から麻薬を勧められ、つい興味本位で手を出してしまった。しばらく滞在を続けていたところ、警察の捜査が入り、現行犯逮捕された。

海外には、好ましからぬ日本人がいるのも事実で、中にはこれまで何人もの日本人をターゲットにしている常習犯もいます。日本人旅行者の心理をついた卑劣な犯行であることは言うまでもありません。一方で、これが日本国内であれば、見知らぬ日本人から金を貸してほしいと頼まれて、すぐに貸す人はまずいないでしょう。被害にあわれた方にも、海外特有の油断があったことも否めません。

海外旅行。注意するは外国人のみにあらず。

(2004年8月9日掲載)

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