1. ホーム
  2. 地図からの選択
  3. テロ・誘拐情勢
  4. フィリピン

フィリピン
テロ・誘拐情勢

更新日 2022年07月28日

1 概況
(1)フィリピンでは、イスラム過激派組織であるアブ・サヤフ・グループ(ASG)、マウテ・グループ、バンサモロ・イスラム自由運動/戦士団(BIFM/BIFF)のほか、共産党傘下の武装組織である新人民軍(NPA)等、多くの過激派組織が活動しています。
(2)ミンダナオ地方において1960年代末から独立運動や自治権獲得運動を展開したモロ民族解放戦線(MNLF)やそこから分離したモロ・イスラム解放戦線(MILF)は当初武装闘争路線でしたが、その後、フィリピン政府との和平路線に転じました。2010年代のフィリピン政府とMILFの対話の結果、2018年にバンサモロ基本法が成立し、イスラム教徒の多い地域における住民投票を経て、2019年にバンサモロ自治政府(BTA)が発足しました。今後、2025年の選挙を経てバンサモロ自治地域自治政府が発足予定となっています。このように和平路線が順調に進捗していることから、これらの組織が武力闘争を再開する兆しはみられません。
 これに対し、ミンダナオ地方西部を中心に、政府との和平交渉に反対する勢力、イスラム過激派組織ISIL(イラク・レバントのイスラム国)との協調を目指す組織も存在し、これらの組織は、政府部隊への襲撃、無差別爆弾事件、身代金目的誘拐事件等のテロ活動を行っています。
 なお、フィリピンでは、2016年9月にダバオ市で発生した爆弾テロを受けて国家非常事態宣言(全土が対象)が、2017年5月に発生した南ラナオ州マラウィ市におけるイスラム過激派組織の市街地占拠事案を受けて戒厳令(ミンダナオ地方対象)がそれぞれ発令されました。2017年10月、同市周辺地域で続いていた治安部隊との衝突は終結し、戒厳令は同テロ組織関係者の捜索等が続行される間は延長されましたが、2019年末には解除されました。その一方で、国家非常事態宣言は、引き続きテロの脅威がある状況を踏まえ、2022年4月現在も継続しています。
 また、NPAは、大都市部を除く全国の広い地域で政府部隊への襲撃のほか、「革命税」を徴収するという名目での企業や富裕層に対する恐喝等を行っています。
(3)南部の危険情報レベル3(渡航中止勧告)の地域と、首都マニラ等の状況は異なりますが、フィリピン全土において、テロ、その他の事案の発生に注意する必要があります。

2 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)アブ・サヤフ・グループ(ASG)
 ASGはバシラン州、スールー州、サンボアンガ市などに拠点を有するイスラム過激派組織です。主にバシラン州及びスールー州において、身代金目的の誘拐や爆弾テロ等を行っています。組織内には、ISILに忠誠を誓うグループも存在します。2019年1月に起きたスールー州ホロ大聖堂爆発事件はASGの犯行と見られています。
 ISILは、フィリピン国内の事案に対する声明の発出をはじめ、他国の戦闘員に対しフィリピンへの集結を呼びかけるなど、フィリピン国内組織との関係を維持しており、外国人戦闘員の流入などにより、今後、これらの組織がテロ活動を再び活発化させる危険性があります。
(2)マウテ・グループ
 マウテ・グループは、ミンダナオ地方南ラナオ州や北ラナオ州に拠点を有するイスラム過激派組織です。2017年5月23日に南ラナオ州マラウィ市(危険情報レベル3の地域)において発生した市街地占拠事案を主導したグループであり、ISILに忠誠を誓っています。同事案の終結(2017年10月)により、現在のマウテ・グループは弱体化しましたが、現地では引き続き同過激派組織関係者が潜伏するなど流動的な治安情勢が続いています。
(3)バンサモロ・イスラム自由運動(BIFM)/(その武装部門)バンサモロ・イスラム自由戦士団(BIFF)
 BIFM/BIFFはマギンダナオ州に拠点を有し、政府との和平交渉に反対してMILFから離脱した構成員により設立されたイスラム過激派組織です。組織内には、ISILに忠誠を誓いISILとの連携を目指すグループも存在します。主にマギンダナオ州やコタバト州において政府部隊への襲撃や民間人を標的としたテロ事案を起こしています。政府によるBIFFを対象とした作戦は継続していますが、引き続き一定の勢力を維持しています。
(4)新人民軍(NPA)
 NPAは、フィリピンの広い範囲に分布する共産党傘下の武装組織であり、資金獲得を目的とした企業恐喝や襲撃、治安部隊への攻撃等を行っています。フィリピン政府と共産党勢力との間の和平プロセスは進展の見通しが立っていません。
フィリピン政府は、2017年に新人民軍をテロ組織と指定し、関係政府機関が連携した対策を実施していますが、引き続きフィリピンの広い範囲で企業恐喝や治安部隊への攻撃等が発生するおそれがあります。

3 誘拐事件の発生状況
 フィリピン全域で犯罪組織による身代金誘拐事案、ミンダナオ地方西部を中心にイスラム過激派組織による誘拐事件が多数発生しており、2018年には、全国で29件の犯罪組織(個人)による誘拐事案、16件のイスラム過激派組織による誘拐事案が発生しています。特に外国人を対象とする身代金誘拐事案には、多額の身代金が要求され、人質が斬首され殺害されるなど残虐な事案が見られます。
 イスラム過激派組織による誘拐事案については、特に2016年から2017年前半にかけて、スールー州周辺海域においてクルーザーや漁船などを襲撃し乗組員を拉致する身代金誘拐事案が多数発生しました。現在はその発生は大幅な減少傾向にありますが、それでも2018年には上記のとおり16件の誘拐事案(うち外国人対象1件)が発生しています。

4 日本人・日本権益に対する脅威
(1)フィリピンのイスラム過激派組織の中には、武力によるフィリピンからの独立や自治権獲得を目指す組織やISILへの支持を表明している組織が存在しますが、これらの組織が特に日本や日本人を明示的に標的にしているとの情報には接していません。
(2)フィリピンにおいてテロ事件による日本人の被害は近年確認されていませんが、これらの組織が敢行するテロには、外国人誘拐や民間人を標的とする爆弾テロなどがあり、フィリピン国内に滞在する日本人がその被害にあう可能性は排除できません。また、NPAは、これまでも日本企業に対し恐喝や襲撃等を行ってきており、引き続き注意が必要です。
 (3)テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
page TOP