感染症(SARS・鳥インフルエンザ等)関連情報

第1回重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する講演会の概要

質疑応答

それでは、これから質疑応答に移らせていただきます。ご質問がある方は挙手をお願いいたします。

岡部センター長

行政的な質問に関しては、私はよくわかりませんので、ご承知おきください。

参加者A

まず、大半の方が6~7日で快方に向かうということについて、具体的な薬は見つかっていないと伺っていますが、なぜ治癒するのでしょうか。

それから、いわゆる発症前のキャリアの方から感染する可能性について伺います。

岡部センター長

治療と治癒ということですけれども、ウィルス感染というものは基本的には自然治癒です。麻疹でも治療薬はありません。水ぼうそうはようやく治療薬が出てきて、治療薬があります。しかし、鼻かぜのコロナウィルスも治療薬がありません。ということで、基本的には、ウィルス感染では、抗生物質のような特効薬は極めて限られています。

したがって、90%ぐらいの方が6日から7日で回復するというのは、ほとんどの場合は自然治癒であろうと考えられますが、香港のレポートでは、抗ウィルス剤の中でリバビリンという薬と、炎症を抑えるステロイドという薬の併用が極めて効果があるという報告をしています。しかし、これには批判的な意見もあり、確立された方法ではありません。

参加者A

免疫によってウィルスの数が減るということですか。

岡部センター長

最終的にはそうです。

参加者A

それは、ゼロにはならないということですか。

岡部センター長

それは病気によって違います。病気によって違うというのは、いろいろなウィルスの病気がありますけれども、治ってしまって、体からウィルスがゼロになる病気もあれば、そのウィルスを持ったまま一生何事もなく平和に過ごすウィルスもあるので、ゼロになるかどうかは確定的な答えはできないと思います。

参加者A

仮にゼロにならないとしたら、その病気が治ったと思っていても、日常生活の中でまただれかにうつしてしまう可能性はあるのでしょうか。

岡部センター長

それもウィルスによって違います。コロナウィルスというのは、普通はそういうことはないと思いますが、例えば、今の質問された方の精密検査をすれば、ウィルスの一つや二つは見つかってもおかしくありません。しかし、それはほかの方にうつしていないし、家の中での家族感染ということもないわけです。一方、ある種のウィルスは、症状がないのにウィルスを持っていて、いつの間にかほかの人にうつしてしまう。例えばB型肝炎というウィルスは、本人に自覚症状はないけれども、血液の中には非常に濃いウィルスがいて、何かのときにうつる可能性があるわけです。

この病気に限ってのご質問としては、病原体はそこまで解明されているわけではないのでわかりませんけれども、普通、呼吸器感染を起こすようなウィルスについては、ある程度治ってしまった場合は、ほかの人にうつるようなものは極めて少ないと思います。

参加者B

最後のところで、症状がなくてもうつす病気もあるし、コロナウィルスはそうではないというお話があったのでちょっとお伺いしたいのですけれども、私どもの会社は、香港の近くということで、仕事もありますので、出張とか、あちらに行っている方が帰ってくるということが具体的に発生しなくはないです。そうした場合、症状がない社員を出社させて大丈夫なのかという問題と、あと、家族のほうが感染するケースが強いのではないかと思っているのですが、38度以上の熱とかが出ていない、無症状の帰国者の場合、どのように扱ったらいいかを、2ケースに分けて教えていただきたいと思います。

岡部センター長

医学的に厳密に言うならば、今コロナウィルスかもしれないことがわかってきたのは、症状が激しい人からそのウィルスが見つかっているからです。現在、かかった可能性のある人を一斉に調べているわけではないから、いつそのウィルスが人の体から出てきて、いつになったらおさまってくるのか、あるいは、いつまでウィルスを持っているかということはまだわからないわけです。

ですから、医学的な事実関係をもって、何日間は大丈夫ですということは、現在の段階ではわかりません。今度は、こういう病気の常識的な考えでいけば、普通の多くの病気は、先ほど申し上げましたように、熱が出るときにウィルスを出し始めます。しかし、おたふくかぜという病気は、耳の下が腫れる2日前からウィルスを出し始めることがわかっています。SARSについては、それほど細かいことがまだわかっていません。

一般的に言うならば、感染の可能性が明らかではなく、症状がない人にもすべて行動制限をかけることは難しいと思います。ただ、感染の可能性があると考えられる、つまりSARSの感染者と接触したような場合には、本当は10日間休んでいただいて、ほかの方と接触しないほうが安全であろうと思います。しかし、もし、咳が出て38度以上の熱があった場合には、やはりレントゲンを撮って、肺炎となればきちんとした治療が必要ですし、肺炎ではないならば経過観察をしていく。少なくとも、様子を見る期間として10日間は必要です。

参加者B

例えば10日間で、おうちの方、特に奥さんなどは不安だと思うのですが、夫が吐いてしまったり、そういう場合、さっき先生がお話ししてくださった、標準的予防策として、マスクをしなさい、手を洗いなさい、ああいうことについてなさったほうがいいと考えてよろしいでしょうか。

岡部センター長

それは、家の中で医療機関並みの消毒をしなさいと言っても実際には無理があります。そこまでやれと言っても、できないことばかり言われると、人はもっとできなくなってしまう。最低限必要なことを、掃除をした後はきちんと手を洗うとか、そこは洗い流すとか、そういう日常のことはきちんとやるべきです。それ以上のことは、何も症状がないのにやることは、現実的になかなか難しいのではないかと思います。決してパーフェクトという意味ではできないですけれども、特に香港等から帰ってきた方で、感染している人と接触した可能性が明らかにある方の場合、例えば隣の机に座っていた人が入院した、という人が帰ってきた場合、10日間は来ないでくださいといったほうが、より安全性が高いと思います。周りに何もなくて帰ってきた人が10日間家にいるということは、現在の段階では、実際にも難しいのではないかと思います。

参加者C

2点ほどお聞きしたいと思います。

1点は、先ほどから話題になっていることですけれども、潜伏期間が最長で10日間というお話ですが、この潜伏期間の10日間の数え方として、感染地域から離れて、例えば中国の別の場所、例えば上海とか、そういったところへ行ったところから数えていい期間でしょうか。

岡部センター長

それは、接触した可能性があるときからという意味です。ですから、上海で接触した可能性がなければ、それは考える必要はないわけですし、接触する可能性が高いところであればそこから数えるべきだろうと思います。その地域がどこかということは、これは常に見ていないとわかりません。

参加者C

2点目は外務省の方にお聞きすることになるかと思いますが、例えば北京でも感染者が出たり、死亡者が出たりということが報道されております。この地域については、今のところ、注意なり勧告は出ていないと思いますが、これについてはいかがでしょうか。

三好課長

中国については、実は、3月末の段階で海外安全情報は出しています。外務省の海外安全情報の中国のページを探り当てていただくと出てくる情報でして、注意事項等を書いたものです。

ただ、危険情報、いわゆる渡航をとりやめたほうがいいとか、延期したほうがいいとかということについては、今の段階では出していません。我々としては、WHOからの情報ですとか、あるいは、市中で感染者が出ているかどうかということ、単に外から持ち込まれて、それで亡くなったということではなくて、中で感染者が出てきた場合に特に注目したいと思っていますので、北京についても、今後十分に危険情報を出す可能性はあると思います。

参加者D

先ほど、病気の原因がウィルスだというお話でしたけれども、例えばインフルエンザに人が一度かかって、治ったら二度とかからないという可能性がありますが、この場合はどうでしょうか。

岡部センター長

実際にはインフルエンザは何回もかかるわけですけれども、それはインフルエンザウィルスが少しずつ変化してくるためで、今かかったインフルエンザに対しては免疫ができるけれども、新しいタイプに対してはインフルエンザとして又一回かかります。しかし、麻疹という病気にかかったならば、この免疫はかなり長くもつので、2度はなかなかかからない。そういう違いがあります。ウィルスによって差があります。

ですから、今回は、新型と思われるコロナウィルスだとして、それに対する免疫は恐らくできるだろうと思います。しかし、それが一生のものであるのか、あるいは、相手がちょっと変わってきてまたかかるものなのか、その辺はまだ断定はできません。

参加者E

3点あります。1点目は、発生が確認された場所は建物全体を消毒しているということがありますね。消毒の効果についてお伺いしたいのですけれども、コロナウィルスとかクラミジアが消滅しているのか、それとも、その辺はよくわかっていないのかということです。

岡部センター長

コロナウィルスの特徴として、アルコールに弱いということがあります。ですから、普通の消毒用アルコールでかなりの効果があるということは言えると思います。

参加者E

今のことに関連すると思うのですが、2点目として、人の治療というか、予防ということが出てきているわけですけれども、今後、もしかすると物からの感染ということも出てくるかもしれない。そういったときに、例えば香港とかそういう発生地域から日本へ輸入される物の対応としては、やはりアルコールなどの消毒が考えられるのでしょうか。

岡部センター長

それは全く仮定の話ですから。もし、そういう可能性があれば消毒をやらなければいけないかもしれないけれども、現在のところ食物(食料)を介しての感染といことはあまり考えられておりません。

参加者E

わかりました。

最後ですけれども、WHO発表の新しい資料で、先ほどのお話で、9割の患者さんは治っているというお話でしたが、例えば中国の累計の患者数が 1,290人で、治った人が 1,025人ということで、 1,290から 1,025を引いた残りの人が現在の患者数という意味でしょうか。

岡部センター長

中国は去年の数も入れてきたので、そこの詳細はわかりません。

参加者F

国際郵便物の取扱いについて教えていただきたいのですけれども、感染ルートがはっきり見えていない中で、空気感染なのか飛沫感染なのかまだわからない中で、はっきりとはわからないとは思いますが、仮に空気感染であった場合、もしくは飛沫感染であった場合として、例えば香港から国際郵便物が届いた場合、どのようなリスクがあって、防御法はどのようなことが有効なのか、もし何かありましたら教えていただきたいのですが。

岡部センター長

少なくとも、今の段階では、郵便物で広がっているという事実はないので、特別な制限は必要ないかと思います。

参加者F

わかりました。ありがとうございました。

参加者G

海外の工場などで、仮に従業員が発病した場合、その工場ではどういう対策をとればいいか、決まりはないと思いますが、こうしたらいいということがありましたら教えてください。

岡部センター長

そこの工場の人の、密接になっている度合いによって違うと思いますが、もし1人の患者さんが出たら、ほかに同じような症状が出た場合はすぐに受診を勧めることにして、中には、そういうことがわかると困るからと逃げてしまう方もいるのですが、やはりそれは本人のためにもなりませんし、周りの人にも不安が出るので、ぐあいが悪い場合はただちに受診ができるといったようなことを、きちんと伝えていただくのがいいのではないかと思います。

参加者G

国によっては、工場閉鎖とかもあると思いますが、特にそこまでは必要でしょうか。

岡部センター長

医学的な判断とか経営的な判断と行政的な判断があると思います。それは私には答えられないのですが、医学的に言うならば、疑いがある方は直ちに医療機関に行けるようにやっていただければと思います。

参加者H

2点あります。

1点は、今、香港で十数名が仕事をしているのですが、彼らに具体的な注意としては、マスクをするとか、うがいをする。それから、手をよく洗う。健康に気をつけるということの指示を出しているのですが、これ以外に予防措置として注意すべきことがあれば教えていただきたいと思います。

岡部センター長

例えばそれは、ワクチンを打つとか、あらかじめ薬を飲むとかいうご質問かと思いますが、そういうものはありません。ですから、お話の中でも申し上げたように、原因がわかっていないので、最低限必要なことはさっき質問された方がおっしゃったようなことで、それはそれできちんとやることです。

それから、何も症状がないのに、いたずらに怖がる必要はありません。それから、「致死的ウィルス」ではないので、これもやたらに不安がる必要はないと思います。しかし、症状が出た場合は、すぐに医療機関に行けるだけの状況にすべきではないかと思います。きちんとした日常生活で健康的に過ごすことが重要ではなかろうかと思います。

参加者H

どうもありがとうございました。

もう1点は行政のほうだと思いますが、いただいた資料の中に、マスクを送ったということが載っていますが、民間の社員が、例えば香港にいる者が、この9000枚のうちから何枚かいただくということはできるのでしょうか。その場合は、どのような手続を踏めばいいのか教えてください。

三好課長

基本的には、香港にある日本人会、日本人学校等、大きな組織を通じてお配りするようにしています。ご心配の向きがあれば、香港の総領事館なり広州の総領事館にお問い合わせいただければと思います。

なお、今回は、緊急ということで、急遽、限られた予算の中でとった措置ですので、可能な限り皆様方が事前に予防策として、現地に送っておくとよいのではないかと思います。

参加者I

香港において累積症例数が上がっていますけれども、先生の知見と申しますか、先生から見て、これから、いつ、どのくらい増えるでしょうか。

岡部センター長

累積症例数は積み重ねですから当然上がると思いますけれども、発生数で見ると、今までのカーブは下がってきています。こういう流行性の病気の場合、1回で下がる場合と、山を二つ越える場合があります。そこを見極める必要があるので、1回下がってそれで終わるということであれば、感染がパッと広がって、そこだけの原因で終わるわけですが、もう1回山があるとすると、その後、病気の人からまた違う人へうつったということになるので、現在の段階は、そこの状況をきちんと見ていく必要があります。もちろん、このまま下がってほしいというのが願いですけれども、そういう動きについては、もう1回次の山があるかもしれないということもありますので、そこは正確にはお答えできない点です。

参加者J

私ども、香港と日本を結ぶルートを持っているのですけれども、少し前の記事で、どこの記事だったか忘れたのですけれども、SARSが疑われる場合、SARSかどうかという判定ができるようなもの、3~4時間でそれが判定できるという記事を読んだことがあるのですが、そういうものはあるのでしょうか。

岡部センター長

それは、正確に言うならば、SARSの可能性があると思われているコロナウィルスを早く検出するための検査ができるようになってきたということです。我が国でも、コロナウィルスがいるかどうかは早く見られるようになっております。しかし、それがSARSかどうかの最終断定にはなりません。診断の参考にはなるけれども、そのウィルスがいなかったから重症化しないとか、あるいは、その検査キットで陽性だから重くなるとかいうものを示すものではありません。また陰性であるからSARSを否定できるものではありません。

参加者J

これは行政側、特に厚労省の管轄かもしれませんけれども、そういうコロナウィルスの検査キットなりを、関空なり成田でやるとか、そういう検疫所に集中的に配備して、なるべく水際で日本に入らないように、そちらで検疫をスムーズに検定ができるようにする仕組みが整えられつつあるのでしょうか。もし、ご存じでした教えてください。

岡部センター長

検査法というものは、何か開発すると、すぐに右か左かがはっきりわかるものではなくて、その中間のグレーゾーンが非常に多いわけです。現在、開発されたばかりですから、陽性が出た場合は陽性であると言っていいと思いますが、陰性をもって直ちに 100%陰性であるかどうかはわかりません。ウィルスの全体像のほんの一部だけを見ているだけなので、信頼度はまだ低い。ということは、一般の医療機関、研究機関、検疫所も含めて、そういうところでだれしもが検査ができるという段階ではありません。

進歩してくればそのようになるかもしれませんけれども、今の段階で、そういう検査ができるのは、国内では感染研と地方衛生研究所というところに制限をかけているのはそのためです。これは陰性だから大丈夫、陽性だから危ないという判断までには至っていないということです。

参加者K

先ほど、コロナウィルスはアルコールに弱いというお話がありましたが、もし、この病気はコロナウィルスが原因であると判定できるならば、お酒が好きな人は感染率が低いと言えるでしょうか。

岡部センター長

私も酒は好きなほうですが、酒を飲んでもインフルエンザにかかったりします。体内のアルコール濃度は、消毒できる濃度まで飲んでしまうと酩酊してひっくり返ってしまうので現実的ではないです。

但し、手指をアルコール消毒するためのものとして、1枚1枚小さなパッケージになっているものを薬局で売っています。そういうものは、接触しそうなときとか危ないときとかは使う価値があると思います。ウィスキーの小瓶を持っているよりはずっといいです。

参加者L

外務省の方にお聞きしたいのですけれども、今後さらに感染が拡大をしてきて、感染者の数が増えて、例えば日本国内で感染者の方が発生したという状況を考えたときに、今後の対策の強化として、例えば危険情報を発する国が増えるとか、ある特定の国からの入国を拒否するとか、そういうことをお考えでしょうか。もし、考えているのであれば、それはどういう手順をとってやられますか。

三好課長

危険情報については、現段階では下から第2段階で、渡航の是非について検討してください、不要不急の渡航の延期するようお勧めしますという勧告を出しているのが、香港、中国広東省です。さらに、域内の感染者が出ている地域ということで、十分に注意という一番下の段階の危険情報を出しているのが、中国の山西省、台湾、ハノイ、シンガポール、トロント。さらに、香港を経由地にしているということでマカオ。この6地域には、一番下の段階の第1段階の危険情報を出しているのが今の状況です。

今後の進展によっては、域内の感染者が増えてくるとか、域内感染が発見されたという状況が出てきた場合には、先進国、途上国を問わず、トロント等にも危険情報を出しているわけですが、そういう危険情報を今後広い地域に出していく、あるいは、段階として上にするとか、退避勧告についても我々としては全く排除するものではありません。

ただ、外務省が出している危険情報は、ご案内のとおり、強制力というか、皆様方への出国禁止令とか入国禁止令というものではなく、あくまでもアドバイスということで、最終的なご判断は国民の一人ひとりにやっていただくシステムになっていますので、その点は十分にご勘案いただければと思います。

従来ですと、外務省の危険情報をもってツアーは中止するとか、キャンセルするとかいう時期が一時ありましたが、最近はそれぞれ旅行社の方々、企業の方々のご判断で、外務省はこう出しているけれども、うちはこうだというご判断も当然あり得るものと私どもは考えています。

危険情報については、引き続き、私どもは世界情勢を注視しながら、出すなり、引き下げるなり、そういうことをしていきたいと思っています。

参加者M

今のお答えに関連しますが、この前、危険情報を発出された直前に、WHOの勧告などもあって、今後、そういう地域を広げるとか、あるいは引き上げるとか、その辺はどういったところを材料視していくのか、その辺をお聞かせいただければと思います。

三好課長

基本的には、WHOのアップデートは毎日見ていますけれども、このあたりが我々にとっては参考になる情報だと思っています。ちなみに、先生からお話がございましたように、WHOは、基本的には各国政府が出してくる数字を認定する形でこのデータがつくられているやに承知していますので、WHOのデータとあわせて、私どもとしては、出先の大使館、総領事館からの情報ももとに危険情報を出していきたいと思っています。

参加者M

続けて質問させていただきます。

実は、昨日、在北京の日本企業の東京本社のあたりでちょっとしたホットイシューがあって、実は北京には潜在的に結構感染者がいるんだという話題を聞きまして、北京もどうなのかなということを考えていたのですが、その辺のところ、先ほどの質問とダブるかもしれませんが、北京の大使館の状況‥‥。昨日は商工会議所主催で講演会が行われたそうですけれども、地域内で、その辺からどう見ているのか、お聞かせいただければと思います。

三好課長

北京についても危険情報を出す可能性がないとは言えないので、事態を注視していきたいと思っています。昨日、説明会が行われたことは私どもも伺っていまして、情報提供ということだったと思います。WHO等からも中国に調査団が入っていますし、今後の状況を我々としては注視していきたいと思っています。

参加者N

現地では、今不足しているマスクとか、うがい薬、消毒用エタノール等を送っているのですけれども、その中で、除菌は、エタノールが20%ほど含まれている脱脂綿を送っているのですが、それでもある程度の消毒効果は期待できるものでしょうか。

岡部センター長

あくまでも除菌で、細菌を相手にしていると思いますので、ウィルスについて確実な効果は見せていないのではないかと思います。エタノールが20%含まれているのであれば、ある程度の効果はあると思いますが。

それから、SARSウィルスそのものではなくて、きれいに拭くということに意味があります。ウエットティッシュの類で危険なのは、右手を拭いておいて、そのまま同じ面で左手を拭くと、右手にあった不潔なものを左手になすりつけているだけのことになります。基本的に大切なのは、やはり手を洗うことです。

参加者O

外務省の方に伺いますが、香港と広東省には出ていますが、マカオとか、広東省の上のあたりについては、今はどのように考えられているのでしょうか。

三好課長

今のところ、危険情報を出すまでも行かないのかなと思っていますが、先ほど来、先生から話がありますように、これは原因がまだ不明ですので、今後の展開によっては、それはあり得ることかなと。地域的には、アジアに特に広がりが見られますので、あり得ることかなとは思っております。ただ、あれもだめ、これもだめというのは、先生が先ほどからおっしゃっているように、確証がないと危険情報もなかなか出せませんので、そのあたりはやや慎重に対応しているところです。

参加者P

先ほどの先生のスライドの中で、香港でマスクをしている人が大勢いる写真を見せていただいたのですが、私、私用で、中国の北方のほうへ参りまして、まち中を見ますと、マスクをしている人はまずいないのが現状でした。大連でしたので発生とは関係ないのでしょうけれども、もし、広東省あたりの状況として、住民が意識してマスク等をしているのかどうか、情報としてはどうでしょうか。

岡部センター長

香港は、私どものスタッフが行ったので直接見た話ですが、広東ですか、そちらのほうはよくわからないです。ただ、マスクをつける、つけないというのは、つけているから発生しないとかいうことよりも、そのニュースが浸透しているところのほうがつけている人が当然多くなると思います。あるいは、そんなことはしなくても大丈夫だと言っている地域もあるようですけれども、何回か申し上げていますが、パーフェクトな方法ではないけれども、やったほうがいいというものに、どの程度頼るかということだと思います。あまり答えになっていなくて申し訳ないのですが、その地域の実情はわかりません。

参加者Q

ウィルスについてもう少し教えていただきたいのですけれども、仮にこれがコロナウィルスであった場合、咳やくしゃみなどの水分に包まれる、または、血液や痰など、粘膜での組織感染をするというお話で、空気感染は、しない、または、しにくいと。そこの線引きですが、咳や痰で外部に排出されて、乾燥したとします。机の上で乾燥が十分に確認されれば、それでウィルスは死滅して、ほかに感染する感染力はなくなるのですか。

あわせて、乾燥が十分に確認されるような、書類についたものが乾燥が十分に確認されていれば、それと接触しても感染しないのか、このことについてお伺いしたいのですが。

岡部センター長

通常の乾燥状態だと、数時間で環境中にあるウィルスが死滅すると考えられています。つまり、半日も24時間も感染力はもたないと考えられます。

参加者R

2点、ご質問させていただきたいと思います。

まず1点は、香港の会社に勤務する社員が住むマンションの住民から感染者があらわれたということで、その社員は、潜伏期間の最長10日間を超えるまでは会社を休んでいるそうですけれども、そこまでする必要があるのかどうかということを教えていただきたいと思います。

岡部センター長

感染者(発症者)に接触した可能性があるという点で、それは非常に慎重なやり方で、賢明なやり方だと思います。しかし、階も違う全然離れたところの人にそれをやるのは、それは慎重であって、非難することではないけれども、一斉にやることを強く勧めることはできないでしょう。それは、事実としてわかっていることが少ないからです。

参加者R

もう1点伺いたいのですけれども、一般的なマスクということですが、それは市販されているマスクでよろしいのでしょうか。

岡部センター長

よろしいかというのは、どういう意味でしょうか。

参加者R

飛沫感染の場合でしたら、一般的なマスクで感染予防の効果があるということでしたが‥‥。

岡部センター長

一般用のマスクが、ある程度飛沫感染を防ぐという程度である、という極めてあいまいな表現しかできません。

参加者S

私どもは海運会社で、感染地域に、これまでも香港とかハノイに入港しております。時間によりますけれども、長期間、1か月近く滞在することもございますので、対策をとる必要があると考えているのですが、今までに挙がっているものとして、手洗い、うがい、マスク等、感染を予防するサイドとしての対策ですが、船へは現地の人間がたくさん訪船しますので、その人に向けて対策をとる方法として有効な効果があるものがあれば、お教えいただきたいのですが。

岡部センター長

着いた先で乗り込んでくる現地の人たちに対する対策ですね。それは、船は感染源がない国から行っているわけですから、船の中には感染源がないわけですよね。

参加者S

船には感染源がないのですが、現地で外から来られる人から‥‥。

岡部センター長

外にいる人が持ち込んでくる可能性があるという意味ですね。

参加者S

はい。

岡部センター長

症状がない人であれば、制限をすることが難しいわけですから、それはできないと思いますが、症状がある人は入らないでくださいということは言うべきだと思います。

参加者S

それから、人だけではなくて、先ほどもお話が出ましたけれども、生鮮食品とか、そういうものに対する何か‥‥‥。

岡部センター長

物については、現在、うわさの段階ですので、それをもって明らかなことは申し上げられません。可能性については調査をしているけれども、それを裏付けるデータは今のところ出ていません。しかし、先ほども申し上げましたように食品から感染が拡大しているということは現在ないようです。

参加者T

現地で、もし疑いがあると言われて、本人がどうしても日本で治療したいと強く希望した場合、帰すことは可能でしょうか。

岡部センター長

僕なら、やめなさいと止めます。移動することは、その人にとって極めて不利だと思います。そこが医療事情が悪いところであるならば、医療事情のいいところに早く移したほうがいいけれども、症状が進行する患者さんを、日本がいいからといって移動させることは、その途中の時点での症状の変化を考えると、あまり賢明な方法ではないと思います。

それから、そういう患者さんを航空会社の方が運ぶかどうかが別の問題としてあると思います。チャーターなら別かもしれませんが。

参加者T

それでは、現地でということですね。

岡部センター長

患者さんを帰国させて治療すると言うことは実際的ではないし、ご本人にとって不利だと思います。

参加者U

外務省の方にお聞きします。

マスクを 9,000枚お送りいただいたということですけれども、それは医療用マスクではなくて一般用のマスクということでよろしいでしょうか。

三好課長

今、N95とかいうものは、実はもう日本国内では生産が追いつかない状況で、緊急ということでこのたび送ったものは、N95ではないのですが、N95と同等の効力があると言われていて、一般用のマスクよりは性能が高いものでございます。

参加者U

すみませんが、メーカーをお教えいただくことは難しいでしょうか。

三好課長

私、手元に持ち合わせておりません。

参加者U

そうしましたら、一般用ではなくて、いわゆる防塵用マスクということでよろしいでしょうか。

岡部センター長

そうです。そういうことです。

司会

そろそろ時間になっておりますので、最後に1名の方からお願いします。

参加者V

外国で発症の疑いが出たときに、すぐに受診をしなさいというお話でしたけれども、受診先の医療機関のレベルというか、こういうところは行ってもしようがないとか。愚問かもしれませんけれども、そういうレベルの目安みたいなものがありますか。最低限、レントゲン設備があるところとか。

岡部センター長

それはふだんから企業の方が情報を持っていて、現地に住んでいる方に流すべきことではないでしょうか。

参加者V

それはやっているのですけれども、通常の医療機関の範囲で十分だということでよろしいでしょうか。

岡部センター長

その「通常」の意味がわからないのですけれども、日本であれば、少なくとも胸のレントゲン写真が撮れて、血液検査ができるところに行くことを勧めています。現地で病気になったときに、どういう病気でどういう状態になったらどうするかは、ふだんからぜひ企業のほうでやっていただきたいことです。

参加者V

それはやらせていただいております。ありがとうございました。

司会

それではそろそろ2時間を過ぎましたので。

岡部センター長

幾つか申し上げた中で、逐次動いているということがありますことと、病原体が見つかったりすると話が変わったりすることもありますので、今回はあくまで現段階での話です。その他の情報も得て頂きたいということをお願い申し上げます。

司会

それでは、これで閉会とさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)

午後4時04分閉会

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