在外公館がまとめた安全の手引きです。海外の在留邦人が、事件や事故に巻き込まれないために留意すべき事項の他、(必要に応じて)戦争、暴動等の緊急事態への備えと緊急時の対処方法が記載されています。
2012年2月改訂
在メキシコ日本国大使館
メキシコは,政治的には比較的に安定していますが,治安面では近年非常に悪い状態が続いており,邦人の犯罪被害例は,大使館に届出のあったものだけでも,2007年83件,2008年75件,2009年53件,2010年61件,2011年には63件が確認されています。
2006年12月に就任したカルデロン大統領は,治安対策をその最重要課題の一つとして掲げ,警察組織の改編をはじめ,治安改善に向けた努力を進めています。同時に,特に麻薬犯罪組織に対する取締りを強力に推し進める中,これに抗する犯罪組織からの治安当局に対する攻撃や,麻薬組織同士の抗争も激化しています。本年は未だ連邦政府による2011年年間の麻薬組織犯罪関連の殺人被害者数の発表がされていませんが,連邦検察庁が発表した同年1月~9月の被害者数は12,903人であり,一昨年同時期の11,583人を上回っており,年間の値を推計すると17,200人を超え,一昨年の15,273人を大幅に上回ることが予想され,現段階では,治安が回復する兆しは見えていません。
また,2007年後半からは,比較的安全とされていた地方都市でも邦人被害の犯罪が増加する等,犯罪被害の地方拡散の傾向も確認されています。
こうした情勢のもと,当大使館は,メキシコ日本商工会議所,日墨協会,日本メキシコ学院,その他日系関連団体・ネットワークの方々と情報交換・意見交換に努め,「大使館からのお知らせ」等のメール配信等により,広く皆様方に安全について注意喚起させていただいています。
この活動の一環として,「安全の手引き」を作成,配布しているところですが,この度,昨今の情勢を踏まえて本小冊子を改訂いたしました。
この小冊子は,メキシコに在住される邦人の方々に対して,その安全対策の指針(参考)となればという願いのもとに編集されたものです。
海外生活での安全確保については,滞在されている皆様方各人の意識に委ねられるといっても過言ではないと思われますが,本冊子がその一助となれば幸いです。
2012年2月
在メキシコ日本国大使館
メキシコ国内の一年間の総犯罪被害届出件数は,治安機関発表によれば,約165万件(2010年統計)とされ,犯罪発生認知件数で見た場合,統計上は日本(2010年:約158万件)と同程度の数値となっています。しかし,その一方で,当地では犯罪被害の届出率が低い(一説によると被害届提出率10~15%)ことを勘案すれば,公式統計よりも,犯罪発生はかなり高い数値で推移していると思われ,実質的には犯罪発生率は日本の数倍であろうと考えられます。
邦人が被害となる犯罪でも,凶悪犯罪の発生は少なくなく,近年だけでも,次のような事件が発生しています。
特に,邦人に脅威となっているのが誘拐事件です。高額な身代金を要求するものから,短時間身柄を拘束し,家族等に比較的低額の身代金を要求したり,銀行ATMを連れ回し,口座の全額を引き下ろさせる等の「特急誘拐」と呼ばれるものまで,メキシコ市を中心に各地で多発しています。08年には,日系人の誘拐事件の被害も確認されました。
また,けん銃やナイフ等の凶器を用いた強盗事件も多発しており,邦人の被害だけでも,2007年10件,2008年7件,2009年5件,2010年9件,2011年も9件が確認されています。
さらに,2007年後半以来顕著となったのが,犯罪の地方拡散傾向です。これまで,「メキシコといってもメキシコ市以外の地方は安全」と言われていましたが,邦人被害の発生地について,2006年にはメキシコ市以外の地方が占める割合が25%であったのに対し,2008年は55%と急上昇し,2009年では62.3%におよび,「地方は安全」という神話は崩れつつあります。2010年は,地方での発生率は減少(全体の46%)しましたが,2011年は再び増加(全体の58.7%)し19州にわたり発生しています。
当国では,マリファナや覚せい剤が生産されているほか,南米からのコカインが米国等へ流入する際の経由地になっているとされています。
薬物情勢に関しては,日本とも決して無縁ではなく,2007年10月には,成田空港からメキシコへ覚せい剤原料の錠剤160キロの密輸を試みたメキシコ人3人が検挙されました(同種錠剤の押収量としては日本国内で過去2番目)。
2008年末から2009年4月にかけ,メキシコから麻薬を密輸しようとしたメキシコ人が成田空港にて相次いで検挙されました。
また,2006年には,メキシコ市の危険地帯であるテピート地区で,3人の邦人旅行者がマリファナを購入し,警察に身柄拘束されました。
2010年には薬物犯罪により2人の邦人が逮捕されました。
2006年12月にカルデロン大統領が就任してから,連邦政府は麻薬組織との闘いに取り組んでおり,軍を投入した掃討作戦を展開しています。連邦政府は2009年に最も危険な人物として37名を指名手配し,現在までに20名が逮捕あるいは殺害されています。その結果,麻薬組織は弱体化する一方,組織の分裂と連邦政府への抵抗により,国内北部国境地域を中心として麻薬組織間及び連邦政府と麻薬組織の抗争が激化しています。チワワ州,タマウリパス州の北部国境都市は治安が非常に悪化しており,注意が必要です。
また,2010年以降,ヌエボ・レオン州モンテレイのメトロポリタン地区では,麻薬組織による道路封鎖が多発しており,同年3月には銃撃戦によりメキシコ人大学生2名が死亡する事案も発生しました。2011年に入ってからは,ハリスコ州グアダラハラのメトロポリタン地区でも麻薬組織による道路封鎖が散発しています。また,同年7月の日中,アグアスカリエンテス州アグアスカリエンテス市の住宅街で,犯罪組織首領の逮捕作戦が行われ,同首領と治安当局の間で銃撃戦が発生しました。これらの都市は観光や商用で訪問する日本人も多く,突発的な銃撃戦や道路封鎖に巻き込まれる可能性も十分考えられますので,注意が必要です。
当国の反体制組織は,現在,活発な武装活動は行っていないものの,2007年7月及び9月に人民革命軍(EPR)によるメキシコ石油公社(PEMEX)のパイプライン爆破事件が発生,インフラ施設を攻撃して政府に対してインパクトを与える行動を起こしています。治安当局は,爆破の目的は人の殺傷ではなく政治的メッセージを発出するためと捉え,現時点では無差別テロや自爆テロを伴う過激性は有していないとの見解を示していますが,今後も同様の事件が引き起こされる可能性は否定できません。
その他,当国内には,1994年にチアパス州で武装蜂起したサパティスタ民族解放軍(EZLN)等の組織がありますが,現在これら組織の力は弱く,政府を転覆させるだけの力や,無差別テロや自爆テロを行うまでの過激性は有してはいないと見られています。しかし,2011年2月,EZLNを支持するグループと親政府系の農民グループが衝突し,EZLNグループが外国人を含む観光客17人を一時拘束する事件を起こしています。
また,2009年9月には,メキシコ市内の各地域において銀行ATMや自動車ディーラー,皮革服飾店を対象とした6件の連続爆破事件が発生しました。幸い,人的被害は発生しませんでしたが,日本人が多数居住するポランコ地区のマックス・マーラ(皮革高級ブティック)もその対象の一つでした。いくつかの事件については,環境保護団体等から犯行声明が出され,連邦検察庁とメキシコ市検察庁は,大学生1名を容疑者として検挙しましたが,連続爆破事件と反体制勢力との関連については判然とせず,その後も,メキシコ市内では深夜の銀行ATMにおいてブタンガス缶を利用した爆破事件が散発していることから,これら勢力の動向にも注視する必要があります。
日本人は概して防犯意識が希薄で,「安全は警察等が守ってくれる」と考える傾向がありますが,いったん外国に出たからには,世界中どの国においても,「自らの安全は自ら守る」という意識が必要です。このことをしっかり認識して,以下の原則を守るよう心がけて下さい。
当地に長く在住する方々が持っている当地独特の犯罪傾向に関する経験的知識には,大変参考となるものがあります。
主な事項を列挙しましたので,心に留めておいて下さい。
誘拐は,私たちが最も注意しなくてはならない犯罪です。残念なことに,メキシコはコロンビアと並んで最も誘拐の多い国の一つと言われています。連邦政府も誘拐を重罰化する法律を制定するなど,懸命に誘拐犯罪の撲滅を図っていますが,いまだ目に見えた成果は出ていないのが実情です。
2011年の誘拐事件は,メキシコ市では減少しましたが,全国では増加しています。
誘拐は予防が最重要ですので,以下を参考にして下さい。
十分に注意をしていても,不幸にして強盗等の被害に遭遇することはあるかもしれません。当地では,けん銃等の凶器を使用しての強盗において,無抵抗で金員を差し出した場合に,そのうえ生命に危害を加えられることは殆どありません。この点にも留意して,強盗等に遭遇した場合には,以下の点を心がけてください。
ここまでは,犯罪被害に遭わないための注意事項について記載しましたが,自らの行為がメキシコの法令に触れ,当局に身柄拘束されることなどないよう以下の点にも注意してください。
外国における正規な滞在は,有効な旅券のもとに許可されています。旅券の有効期限を切らすことのないよう更新してください。
また,当地の滞在許可であるFMNI(旧FM3)等の有効期間の更新を忘れず,許可された活動以外の活動は行わないよう心掛けてください。
(2009年中,8名の日本人の方が,出入国関係法令違反により当局に身柄拘束されました。2010年では身柄拘束はありませんが,不法残留により1名が罰金を徴収されました。)
日本において違法行為であることは,当地でもほとんどが違法行為に該当します。「今は海外にいるから」などという安直な考えは避け,当地の法令を遵守してください。事件によっては,当地で裁かれることがなくても,日本の法令の国外犯に該当する場合もあり,日本の法令で禁止されていることは,当地においても禁止であることを銘記してください。
メキシコは,「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」の締約国です。当地においては,親権を持つ親であっても,他の親権者や監護権者の明確な同意を得ずに子(16歳未満)の居所を移動させること(親が帰国する際に子を同行する場合を含む)は,「未成年の人身売買」として重大な犯罪となり,親権の剥奪や,刑事処罰の対象となる場合がありますので,ご注意ください。
現在まで,日本人がこのような事案で当局により処罰の対象とされた例は確認されていませんが,事件としては,実際に逮捕令状が出され,執行された例があります。
住所 Paseo de la Reforma No.395, Col.Cuauhtemoc, Mexico,D.F.
電話 (55)5211-0028
FAX (55)5207-7743
FAX (55)5207-7030(領事班)
住所 Lamartine No.238 Col.Chapultepec Morales, Mexico,D.F.
電話 (55)5531-2501
FAX (55)5231-3395
※業務時間外の緊急連絡先
電話 044-55-2922-5015
001-800-627-8701
緊急連絡先は,領事班執務時間外の事故・事件等により,邦人の方の生命・身体等に危険が及んでいる等の緊急事態に備え,回線を確保しているものです。お急ぎでない案件の連絡・お問合せについては,業務時間内(土日祝日等を除く9時30分~13時30分,15時00分~18時30分)にお願いします。
住所 Av.Ejercito Nacional No.862, Col.Los Morales Seccion
Palmas, Mexico,D.F.
電話 5387-2400
ア 当地に3か月以上滞在される在留邦人の方は,在留届の提出を励行して下さい(法律上の義務でもあります)。大使館では,災害発生時等に,これら在留届をもとに安否確認を行います。在留届が提出されていない場合には,安否確認や留守宅への連絡が極めて困難となります。また,転居の際には領事班まで御一報下さい。
イ 所属先等に緊急連絡網がある場合は,同連絡網に基づく緊急の連絡を誰から受け誰に繋ぐのか等,平素から確認しておいてください。
ウ 緊急事態はいつ発生するとも限りません。あらかじめそのような場合の家族間,企業・団体内での緊急連絡方法につき決めておいてください。
エ 大使館領事班では,治安情報等のお知らせをメールで提供しています。「大使館からのお知らせ」のメールの受信を希望される方は,メールアドレスを当館領事班へ登録してください。
オ 緊急事態発生の際には,大使館からメール・電話等により必要な連絡を行いますが,電話回線等が使用できない場合には,大使館FM無線機(88.5メガヘルツ,89.3メガヘルツ)あるいはNHK海外放送により必要な連絡を行うことがあります。これらのFM放送,短波放送が受信可能なラジオを電池とともに準備しておいて下さい。
さらに,大使館は,緊急事態発生時には,「メキシコ商工会議所」「日墨協会」「日本メキシコ学院」等の協力を得て,その連絡表(網)により情報を提供するとともに必要な連絡を行います。
ア 旅券,現金,貴金属等最低限必要なものは,直ちに持ち出せるよう,あらかじめまとめて保管しておいて下さい。
イ 緊急時には,一定期間自宅での待機を勧告することもありますので,非常用食料,水,医薬品,燃料等を最低限3日分程度準備しておいて下さい。
緊急事態が発生し,または発生するおそれのある場合に,大使館は,所要の情報収集,情勢判断及び対策の策定を行い,各団体の緊急連絡網,メール等を通じ随時連絡します。
平静を保ち,流言飛語に惑わされたり,群衆心理による騒乱等に巻き込まれることのないうように注意して下さい。
ア 電話回線が不通となる事態も想定されますので,短波,FM放送の受信が常に受けられるようにして下さい。
イ 緊急事態の発生の際には,各自でも,現地,海外放送,衛星放送テレビ,インターネット等により情報収集に心がけて下さい。
ア 現場の状況のうち通報する必要があると認めたものは,随時,大使館に直接又は商工会議所等を通じて通報して下さい。その他の在留邦人の方の貴重な情報となります。
イ 自身,家族,他の邦人の生命・身体・財産に危害が及んでいる場合,又は及ぶ恐れがあるときは,迅速かつ具体的にその状況を大使館に通報して下さい。
ウ 緊急事態発生の際には,お互いに助け合って対応に当たることも必要になります。大使館からは,在留邦人の方々に種々のお手伝いをお願いすることもあります。その際には,ご協力お願いします。
ア 事態が悪化し,各自又は会社・団体等の判断,あるいは大使館の勧告等により,自発的に帰国,あるいは第三国へ退避する場合,その旨を大使館へ連絡して下さい。
連絡が困難である場合は,日本の外務省の海外邦人安全課(+81-3-5501-8160)等へ通報するよう努めて下さい。
イ 大使館から「退避勧告」が出された場合は,一般商業便が運航している間に,可能な限り早急に国外へ退避して下さい。
ウ 事態が切迫し,大使館より退避又は避難のための集結の勧告を受けた場合は,指定された緊急避難先に集結して下さい。
その際,当面の間,同避難場所で待機する必要がある場合も想定されますので,可能であれば前記非常用物資を持参するようお願いします。
他方,緊急時には,自身及び家族の生命,身体の安全を第一に考え,その他の携行荷物は必要最小限にしていただくようお願いします。
旅券の「所持人記載欄」は,漏れなく記載してください。
また,余白に血液型を記入しておいて下さい。
FMNI(旧FM3),FMM(入国カード),その他の査証,運転免許証等は,いつでも持ち出せるように保管しておいて下さい。
これら貴重品も,旅券同様,非常時には直ぐに持ち出せるよう保管しておいて下さい。
ア 自動車は,常時整備し,燃料は十分入れておいて下さい。
イ 車内には懐中電灯,地図を備えて下さい。
ウ 自動車をお持ちでない方は,近くに住む自動車を持っている方と,非常時には同乗できるよう平素から相談しておいて下さい。
ア 衣類・着替え
イ 履き物(行動しやすい,靴底の厚いもの)
ウ 洗面道具,タオル等
エ 非常用食料
オ 医薬品
カ ラジオ
キ 携帯電話(平素からバッテリーの充電に心掛ける)
ク 懐中電灯,予備電池,ライター,マッチ,ろうそく,ナイフ,缶切り,簡単な炊事用具,ヘルメット,筆記具,トイレットペーパー等。
在メキシコ日本国大使館としては,在留邦人の皆様とは常日頃から情報交換を密にしたいと考えております。
つきましては,ご質問・ご意見などありましたら,お気軽に当館領事班までご連絡下さい。
電話 5211-0028(代表)
FAX 5207-7030
Eメール ryojibu@me.mofa.go.jp
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