在外公館がまとめた安全の手引きです。海外の在留邦人が、事件や事故に巻き込まれないために留意すべき事項の他、(必要に応じて)戦争、暴動等の緊急事態への備えと緊急時の対処方法が記載されています。
平成23年4月1日
在アイルランド日本国大使館
アイルランド国民の約90%はカトリック教徒であり、国民気質は概して温和です。
犯罪総件数は減少傾向にある一方、屋外強盗やすり・ひったくり等の事件は増加傾向にあります。窃盗犯罪は全体として前年比-1.9%でしたが、やはり空き巣・車上狙い・すり・ひったくり等には注意が必要です。また、都市部を中心に深夜帯には刃物使用の傷害事件も毎日のように発生しています。先般公表された2010年の犯罪統計によれば、2009年に比し銃器薬物犯罪は減少したものの、強盗やすり・ひったくりのほか誘拐・監禁などは増加しています。
こうした新しい治安事情も踏まえまして、アイルランドで生活される邦人の方々のために、「安全の手引き」を改訂しましたので、当地での生活の参考にしていただければと思います。
2010年の犯罪発生件数は270,449件で、前年より5.0%の減少となりました。犯罪総件数の約37%は窃盗犯罪です。殺人・銃器薬物犯罪は減少しているものの、近年の経済情勢の悪化を受け、強盗・すり・ひったくり・誘拐・監禁は増加しています。銃器薬物取引に絡む抗争の頻発により警察も取り締まりを強化し、2008年以降、殺人等の一部凶悪犯罪は減少しました。しかし、依然ギャング絡みの犯罪は増加しています。凶悪犯罪の多くは、首都ダブリンに限らず主な都市部で夜間から早朝にかけて発生しています。
窃盗目的の住居侵入件数は、ここ10年位増減を繰り返しています。2010年の発生件数は24,502件で前年比6.2%の減少となりました。
空き巣犯人は事前に家族等の行動の下調べをすると言われていますので、自宅周辺で不審な人物等を見かけた場合には用心が必要です。また、車が故障したから電話を貸して欲しいなどと口実を設けて住居に入り、そこから仲間に電話をして番号通知制度を悪用して電話番号を控え、犯行直前に電話し留守を確かめるという手口があります。見知らぬ人の訪問を突然受けた時には、住居に立ち入らせないようにして下さい。向こう三軒両隣の精神で、日頃から近所の人たちとは良好な関係を保ち、留守にする時など声を掛けておきましょう。留守がちな家、老人のみの家、侵入警報装置がない家などは狙われやすいので注意が必要です。
郵便物を狙った窃盗事件も多く発生しています。郵便物の中には個人情報を含んだ重要な物もありますので、個人情報がカード詐欺などの犯罪に悪用されないためにも、郵便受けには施錠する、郵便物送付先を会社等に指定するなどの予防措置を講じましょう。
侵入盗防止のために以下の対策をお薦めします。
(イ)隣人と良好な関係を築き、お互い防犯に協力しあう。
(ロ)防犯警報装置を設置する(定期的な点検を忘れない)。
(ハ)長期間留守にする場合には、タイマーを利用して照明を一定時間点灯させ、留守をカムフラージュする。
(ニ)戸締まりは絶対に忘れない。
(ホ)貴重品や高価電化製品が外から見えないようにする。
駐車中、座席やダッシュボードの上など目に付く所にバッグ類等を置くと、ガラスを破られたりドアの錠を壊されたりします。貴重品を車内に入れるところを見られると、トランクの中といえども決して安全ではありません。盗難防止のためにはまず警報装置の取り付けを薦めます。
また、信号待ちの際、ドアロックをしてないとドアを開けられて被害に遭うこともあります。駐車中はもちろん、走行中でも容易に外部から見える所には貴重品を置かない様にすることが肝要です。カメラ・パソコン・ラジカセ・CDプレーヤー・カーナビ等の車内放置は犯罪を誘発する要因になります。
車両盗難はその大半が若者による犯行と言われています。彼らは車を盗んだ後、乗り回して楽しみ、暴走行為で車両を壊した後放置したり、人気のない所で焼棄したりします。また、犯罪組織が犯行時の逃走車両とするために窃取することもあります。
駐車場所に十分気を付ける、警報装置を取り付ける他、ハンドルとブレーキペダルを固定する器具又はギヤとサイドブレーキを固定する防犯器具も装着した方がより安全です。また、空き巣に入った際に車の鍵を捜し出して車を盗むといった犯行も多いことから、留守中の鍵の保管にも注意して下さい。
ダブリンの繁華街であるオコンネル通りやグラフトン通り周辺など人通りの多い場所、混雑している電車内などでスリが多く発生しています。ひったくりは繁華街から若干離れた場所で多く発生しています。追い越しざまのひったくりや、複数人が取り囲み一人が注意を引きつけて他の物が懐やバッグ等から窃取するという手口もあります。旅行者は恰好のターゲットになりますので、地図を拡げながらウロウロしないようにしましょう。
現金の所持は必要最小限にし、カード類も分散して所持するとよいでしょう。
レストラン・パブ・クラブなどやショッピング中には置引きに注意が必要です。たとえ一流と言われているホテルでも安心はできません。目を離した隙にハンドバック、カバン等を盗まれ、現金だけ抜かれ付近に捨てられるケースが多いようです。安易に椅子に上着を掛けたり、短時間でもバック等を置きっぱなしにして離れることのないようにして下さい。
裏通りはもちろんのこと繁華街といえども夜間の一人歩きは避けて下さい。特に、深夜帯は絶対安全と言える地域はありません。帰宅が遅くなる場合には、家族・知人等に迎えに来てもらうか公共交通機関を利用するようにして下さい。タクシーは一般的に安全と言えますが、深夜帯における女性の単独乗車は避けた方が賢明です。偽タクシーによる強盗・わいせつ事案も発生していますので、流しの利用より電話で配車を依頼する事を勧めます。
過去に、置引きの被害に遭った日本人が被害品を取り戻そうとして、犯人の仲間に殴打され怪我をするという事件がありました。万が一被害に遭っても、犯人を追いかけるようなことはせず、大声を出したり、速やかに警察に通報するなどの対応を心掛けて下さい。負傷した場合は何よりも落ち着いて、怪我の応急処置、救護の要請を行って下さい。(警察、救急車とも999または112)
薬物密売組織間の抗争による殺人事件や銃器使用事件が多く発生しています。2010年は薬物事犯20,002件、銃器所持416件、銃器使用177件の検挙がありました。これらの犯罪はいずれも昨年を下回りました。
薬物は刑務所の中にまで浸透しています。アイルランドはコカイン消費量が人口比ベースで欧州第4位であり、深刻な社会問題のひとつとなっています。薬物に手を出さないのはもちろん、知らないうちに薬物取引に巻き込まれる場合もありますので、他人からちょっとだけ荷物を預かって欲しい、見ておいて欲しい、運んで欲しいなどと言われても断り、その場からすぐに立ち去って下さい。
日本とアイルランドとの間には査証免除取極があり、観光等の非営利活動及び短期の商用(ビジネス)の場合は、滞在期間が6ヶ月以内ならばアイルランド入国に際して査証はいりません。しかし、3ヶ月以上滞在する場合は、最寄りの警察署(Garda)で「外国人登録」を行うと同時に滞在許可を取得する必要があります。(ダブリンはThe National Immigration Bureau、通称Aliens Office、13/14Burgh Quay, 電話(01)666-9100)
(イ)アイルランドと英国とは共通旅行区域(Common Travel Area)となっており、英国経由で当地に入国する場合は、英国の空港でアイルランドへの入国審査が行われます。最近アイルランドへの入国審査が非常に厳しくなっています。就学予定の方が英国経由でアイルランドに入国する場合、3ヶ月以内であっても、英国の空港で学校からの入学許可等のレター及び入学金等の支払い証明書の提示を求められる事があります。また、入国してから学校を探すと申し出た場合も、上記の様な証明書等もなく、帰国の航空券も所持していない場合、乗り継ぎを拒否される場合があります。英国以外を経由してアイルランドに入国する場合も、上記の様なケースですとアイルランドにおいて入国を拒否される場合があります。過去には、入国してから語学学校を決めて英語を勉強したいと6ヶ月先の帰国航空予約券を提示しながら申し出たところ、ダブリン空港で入国を拒否された日本人がいます。
(ロ)短期の商用の場合でも、商用であることの証拠書類を求められることがありますので、訪問先からのInvitation Letterまたは派遣元のレター(目的、訪問先、滞在期間、滞在先等を記載)を携行して下さい。
(ハ)滞在目的に合った滞在許可なしに滞在したり、滞在許可期限が切れたままの滞在は不法滞在となり、また、労働許可を得ずに就労した場合(ワーキングホリデーを除く)は不法就労となり、ともに国外退去及び処罰の対象となりますので注意して下さい。
滞在期間が3ヶ月以内の場合でも、入国時(英国の空港を含む)に許可された滞在期間を超えて滞在する場合は、滞在許可期間内に更新を行う必要があります。
(ニ)アイルランド入国時の旅券の残存有効期間は、就学の場合はコース終了後6ヶ月以上、その他の場合は3ヶ月以上が必要です。また、片道切符しか所持していない場合や所持金が少ない場合は入国を拒否されたり、滞在期間を限定されることがあります。一人旅の女性も入国審査が厳しいことがあります。
(ホ)政府は、不法移民排除のための水際対策を強化しています。査証免除だからといって安易な考えでいると入国出来ないという事態にもなりかねませんので、十分な注意が必要です。また、出入国関係規則が変更されることもありますので、念のため出発前に在京アイルランド大使館に入国手続きについて確認されることをおすすめします。
10,000ユーロ以上の現金・小切手類をEU圏内に持ち込む場合あるいはEU圏外へ持ち出す場合は、税関への申告が必要です。申告手続等の詳細は下記まで問い合わせ下さい。
(イ)アイルランドに3ヶ月以上滞在される方は必ず大使館に在留届を提出して下さい(旅券法で義務づけられています)。これは大使館からの種々のお知らせ等の連絡とともに、緊急時における安否確認を行う際に使用されるものです。在留届の内容は個人情報として大使館限りで保管し、外部へ提供されることはありません。
(ロ)在留届提出後、転居・帰国等でアイルランドを去る際や、記載事項に変更があった場合(家族の呼び寄せ・帰国、婚姻、出産、就職等)は必ず手紙、FAX、Eメールで連絡して下さい。(時間的余裕がない場合は電話でも可)
(ハ)遠隔地で当館においでになれない方には在留届用紙をお送りします。また、外務省ホームページからの登録もできます。
旅行制限は特にありません。
軍事施設の写真撮影は禁止されています。空港での撮影は、公共スペースでは問題ありません。しかし、それ以外の空港施設については禁止されています。
(イ)アイルランドは日本と同じ左側通行ですので、運転する上で戸惑うことは少ないと思われます。住宅街はT字路や行き止まりの道路が多いですが、標識は比較的整備されています。信号のない交差点では右側からの車両が優先となります(YIELDの標識)。郊外の交差点はラウンドアバウトと呼ばれるロータリー式が多いですが、市内では多くの交差点に信号があります。注意すべきことは、表示位置が日本より低く、直進表示は緑矢印灯だけで表示される場合もあり、馴れるまでは見にくく感じられます。また、工事や故障・停電などのために信号が点灯していないことも時々あります。
(ロ)運転マナーは一般的に良いと思われます。さはさりながら信号無視や無理な割り込み等のマナーの悪いドライバーも見受けられます。幹線道路でも横断歩道以外を平気で横断する歩行者が通勤時間帯を中心に多く見られますので十分注意して下さい。また、速度違反や飲酒運転の取り締まりは年々強化されています。シートベルト着用は車に乗車する全ての者に義務づけられており、12歳未満の者を助手席に乗車させることも禁止です。また、踏切での一時停止は必要ありません。追突事故の原因にもなりますので注意して下さい。
(ハ)交通事故を起こした場合は、すぐ警察(負傷者がある時は救急車も。Tel999あるいは112)を呼んでもらい、警察・救急車が来るまでの間に目撃者を確保したほうが良いでしょう。警察を呼んで実況見分をしてもらい、後に事故を証明できるようにしておくとともに、事故の相手側の氏名、住所、電話番号、車種、登録番号、保険会社名を控えておきましょう。
(1)カトリック信者が多いこともあり、日曜日は教会に行く等静かに過ごす人も多くいます。日曜日の午前中は多くの施設、店舗が閉まっており、また公共交通機関の運行本数も目立って少なくなります。
(2)公共施設内や乗り物などは禁煙です。
(3)水道水は特に問題はなく普通に飲めますが、煮沸、濾過等をしている人もいます。ミネラルウォーターも広く販売されています。
(4)食中毒、肝炎等の発症例もあり、生ものには十分気をつける必要があります。
(5)医療事情
この国の医療制度はホームドクター制度になっています。まず、ホームドクター(GP)に診察してもらい、その紹介状を持って専門医に行くことになります。ホームドクターにかからないで直接行ける専門医は急患を除き歯科医のみです。
緊急医療体制は整備されているとはいえ、医師不足、看護師不足、病床不足の影響も深刻で、Public Hospital(無料又は低料金)の場合、入院が必要であっても直ちに入院できない場合が多くあります。Private Hospitalは高料金ですが、Public Hospitalより早い治療・入院ができます。また、救急車で搬送されても差し迫った生命の危険がないと判断されると、場合によっては長時間待たされることもあります。
(6)その他
アイルランドには日本人会はありません。日系企業の団体「日本企業懇話会」(連絡先は当館領事班に照会願います)があります。
(7)参考ウェブサイト
アイルランド政府の公共サービス案内サイト「Citizens Information」では、当地の生活に関する情報を多分野にわたり掲載しています。
2001年9月11日の米国における同時多発テロ以降、アイルランド国内においてはアル・カーイダ等の国際テロ組織によるテロは発生していません。
アイルランド国内最大のテロ組織であったIRAは1997年にテロ活動停止を宣言し、活動方針を武装闘争から合法的政治活動へと転換しました。その結果、IRAは完全に武装活動を放棄した事を公式に認められ、2007年5月にはIRAの政治活動母体であるシン・フェイン党も参加した北アイルランド自治政府が復活しました。
しかし、和平路線を不満としてIRAから離脱した共和主義者らを中心に結成された真のIRAやIRA継続派などの過激派グループは依然としてテロ活動を放棄していません。これらの組織は、北アイルランドを中心に爆弾や武器類の調達と保管、要員の徴募と訓練、宣伝活動等を行い、英国軍隊や北アイルランド警察等を標的に爆弾テロ攻撃を行っています。
また、アイルランドではイスラム過激派組織の存在は確認されていないものの、心情的に同調している者は存在するといわれています。
ここ数年の誘拐事件の発生件数は40件前後で推移しています。これらはいずれも身代金を目的とした一般犯罪で、テロや政治目的が背景にあるものではありません。近年の傾向として、現金輸送を担当する警備会社の警備員や銀行員の家族などを誘拐して本人を脅迫し、現金を要求する事案(Tiger Kidnapping)が増えています。
日本人・日本権益に対する具体的脅威の存在は確認されていませんし、その脅威度も高いと見られていません。しかし、日本を攻撃対象として名指しする声明がアル・カーイダ関係者と名乗る者等により、インターネット等を通じて出されている現状を考慮すれば、巻き添え等偶発的な被害のみならず、直接の標的とされる可能性も完全には排除できません。普段から新聞・テレビ等のニュースに気を配り、一般犯罪やテロに巻き込まれないよう十分注意しましょう。
(1)在留届は、緊急時に皆様の安全を確認する際に必要な重要な届出です。必ず提出し、届出事項に変更が生じた場合も必ず大使館に連絡して下さい。
(2)家族間・友人間・勤務先等との連絡方法、連絡網を日頃から準備しておきましょう。
(3)アイルランドでは、緊急避難場所の指定はありません。家族等と緊急時の集合場所を決めておきましょう。
(4)非常用の食料・水・医薬品などを準備しておきましょう(最低10日分)。
(5)旅券・現金はいざという時にすぐ持ち出せるようにしましょう。
(6)車両の整備、燃料の補充は常に心掛けましょう。
(1)在留邦人の保護は大使館の重要な任務です。大使館は、緊急時には情報収集・情勢判断・対策の策定を行いますので、まずは大使館までご一報下さい。
(2)各種メディアからの情報収集も各自心掛けて下さい。
(3)緊急事態の蓋然性が高まった場合、基本的には外出を控え、当局の指示に従うか次の行動に備えて下さい。
(4)各自の判断で国外待避が必要と判断した場合は、とりあえず航空券の予約を入れることをお勧めします。空路による待避が困難な場合は船による待避に切り替えるか、場合によっては大使館が中心となり移動手段のアレンジをする事もありますので、当大使館の勧告に従うようにして下さい。
(1)警察・消防 999 または 112
(2)日本大使館(休館日は、アイルランドの休日および若干の日本休日(年によって異なりますので当館ホームページで確認して下さい))
当館サイト http://www.ie.emb-japan.go.jp/Nihongo.htm![]()
代表電話 353(国番号)―(0)1-202-8300
FAX 353-(0)1-283-8726
領事班 353-(0)1―202-8308・8309
領事班FAX 353―(0)1―260-1285
(3)日本外務省
領事局海外邦人安全課 0081-(0)3-5501-8160(直通)
(夜間) 0081-(0)3-5501-8402(当直室)
アイルランドは概して治安も良く、大規模災害もほとんど無い国です。しかしながら、事故や災害の被害に遭う可能性はゼロではありません。事件の被害者となった日本の方もおられます。アイルランドでの生活を楽しみ、思い出多きものとするためにも、常日頃から防犯やいざという時のための心構えは持っていたいものです。
日本と勝手の違う海外で生活するうえで、自分の身は自分で守るということは大変な事ですが、この機会に今一度安全対策について見直してみてはいかがでしょうか。また、どんなことでも結構ですので、困ったときには遠慮無く大使館にご連絡下さい。