在外公館がまとめた安全の手引きです。海外の在留邦人が、事件や事故に巻き込まれないために留意すべき事項の他、(必要に応じて)戦争、暴動等の緊急事態への備えと緊急時の対処方法が記載されています。
在イラン日本国大使館
平成24年1月
作成:警備班/領事班
イランの治安状況は、イラクやアフガニスタン、パキスタンとの国境付近及び南東部州を除き、首都テヘランを含むその他の地域では概ね平穏ですが、当国滞在にあたっては、まずは以下の3つの事項を念頭に置き、平時から緊急事態が発生したことを想定して準備、行動することが肝要です。
「自分の身は自分で守る」のが原則です。このことを常に心がけて下さい。
テヘランはアルボルズ山脈の南側山麓部に位置していますが、この山脈が地震帯に属しており、多数の明瞭な活断層が分布していることをご存じでしょうか。
過去の地震記録によれば、テヘランは約150年の再来周期で地震に見舞われており、近い将来、テヘランで大地震が発生する可能性があります。必要最低限の緊急備蓄品は各家庭で準備しておくことをお奨めします。
詳しくは付録2「緊急備蓄品のススメ」
をご覧ください。
2011年9月下旬、メールアドレスをお持ちの280世帯(全世帯数の約80%にあたります。)に対し、緊急事態が発生したことを想定して、一斉メールを大使館より送信し、着信状況の確認作業を行いました。メールをお持ちでない方にはファックスあるいは電話での確認作業を行いましたが、緊急事態発生時の第一報を認知するためにはメールが極めて有効となります。
大使館へのメールアドレス登録にご協力お願いします。
住所、電話番号、家族構成等、在留届に変更が生じた場合は速やかに大使館に届出をしてください。
上記の国境付近や南東部州をはじめ、テヘラン市内であっても現地の人が危なくて立ち寄らないような場所があります。このような場所には近づかないよう心がけてください。
また、普段は平穏な場所でも、政治集会やデモ、過激な国民行事が行われている場合には注意が必要です。
当国は「厳格なイスラムの戒律に基づく政治・社会体制下にある国」であり、生活環境が日本とは全く異なるということを認識する必要があります。日本では当然のことであっても、当国では時として法に触れる行為とみなされ拘束されるなどの事態に発展する場合がありますのでご注意ください。

当国では、犯罪発生率・検挙率等に関する統計資料は公表されていないため、具体的な犯罪の発生傾向を基にした判断はできませんが、日常の報道に照らしてみると一般犯罪はかなり多く発生しているものと思われます。
特に、強盗事件、窃盗事件(特にひったくり、自動車盗、オートバイ盗)が多発している状況にあり、また刃物を使用した殺人、傷害事件の報道も多数みられることから、決して「安全」とは言えない状態にあります。
邦人を被害者とする最近の事件としては、
等が挙げられます。
犯人は刃物を所持している場合もあり、抵抗すると躊躇なく斬りつけられる可能性もありますので注意が必要です。
その他、路上で車から警察官を装って旅行者等に近づき、麻薬検査と称して所持品及び財布の中を見せるよう求め、ドル紙幣等外国通貨を数えるふりをして巧みに高額紙幣のみを抜き取る偽警察官事件も報告されています。
さらに、警察の発表では当国には約120万人の麻薬常習者が存在するとされており、若者が麻薬購入資金を稼ぐために強盗や窃盗等の犯罪を起こすケースも多いと言われています。
また、いわゆる「白タク」の運転手が強盗や強姦を働くケースも多数報告されています。深夜にタクシーを利用する場合はテレフォンタクシーや正規タクシーを利用し、決して白タクや知らない人の車には乗らないようにしてください。
(1) 犯罪被害に遭わないためには、常に「気を抜かない」、「周囲を警戒する」ことが重要です。当国では、日本人は金持ちと思われがちであり、日常生活を通じ、常に「狙われている」といった意識を持つことが大切です。
(2) 当国はイスラム体制国家です。イスラムを冒涜したと取られるおそれのある言動は厳に慎むとともに、特に女性は、イスラム教徒でない場合でも身体の線を隠すべくスカーフ、ロングコートの着用が義務付けられています。また夏季の素足にも注意が必要です。当国の法律ではこれら義務違反者は10日から2ヶ月の禁固刑が規定されているので、服装等については十分注意し、思いがけないトラブルに巻き込まれないよう心がけることが大切です。
(3) 当国人は、強く自己主張をする傾向があります。一般的に当国人は非常に親切であり、自己主張と言っても決して悪気のあるものではありませんが、邦人がイラン人と接触する場合はイラン人の行動様式を十分認識した上で対応する必要があります。イラン人に限りませんが、外国人の間では「自分の要求すべきことは相手にはっきり伝達する」という姿勢が顕著なので、日本人としては戸惑うことがありますが、相手方からの要求については「イエス、ノー」 の意思表示を明確に伝えることが大切です。
(4) 当国内の深刻な麻薬汚染を背景に、当局は麻薬関連犯罪を厳しく取り締まっており、これら犯罪に対しては極刑をもって対処しています。従って決して麻薬に手を出すことのないよう、またこれら犯罪に巻き込まれることのないよう注意してください。仮に当国の治安当局に何らかの嫌疑で身柄を拘束されても、イラン側から当大使館に連絡が入るという保証は全くありません。(いずれにせよ、そのような場合には当大使館への連絡、面接を求めることが適当です。)違反行為はもちろん、嫌疑をかけられるようなことがないよう細心の注意が必要です。
(5) また、当国では政府関連施設及び公共機関施設等に対する写真撮影及びビデオ撮影が禁じられており、当局も厳しい取締りを実施しています。過去には公共施設において写真撮影をしていた邦人が当局にカメラを没収される事案も発生しています。撮影箇所によっては身柄を拘束される可能性もありますので、写真撮影等に関しては観光名所に限定する等十分に注意してください。
邦人が被害者となる犯罪としては、平成19年10月にケルマン州(イラン南東部)バム市を観光中の邦人旅行者が麻薬密輸武装組織に誘拐されるという事件が発生しています(平成20年6月無事解放)。また、テヘラン市内でも邦人が被害者となる強盗、窃盗等の事件が多数発生しています。
平成22年4月から平成23年11月までの邦人被害犯罪については、当館に報告されている限り8件発生しています。内訳は、強盗1件(昏睡強盗)、窃盗6件(スリ2件、ひったくり1件、かっぱらい2件、車上狙い1件)です。
平成21年6月12日に行われた当国大統領選挙の後、テヘランをはじめとする各都市で選挙結果に抗議する民衆による集会やデモが頻繁に行われ、警察部隊と衝突するという事態が発生しました。これら一連の騒乱では多数の逮捕者や死傷者が出ています。現在は散発的ではあるものの、抗議グループは機会を捉えインターネット等を通じて集会・デモへの参加を呼びかけていますので、引き続き十分注意してください。
当国に長期滞在する場合、ホテルは別としてアパート等集合住宅から住居を選択するというのが一般的です。一戸建ては必ずしも防犯対策がなされているとは限らず、過去には
等が当館に報告されています。
一戸建てに居住する場合は、道路や空き地に近い部分の窓枠に防犯対策を講じるとともに、玄関のドアのロックを二重三重にすることも必要です。
また、比較的安全といわれるアパートに居住する場合でも、階段付近の窓枠防犯対策はもちろん、入居後の早い時期に玄関鍵を交換し、不在時にも室内灯・玄関灯を点灯しておく等の配慮が必要です。
アパートは、基本的には入り口に管理人(門番)が常駐しているところが多く、1~2階は窓等が防犯柵で厳重にガードされているため狙われにくいと言われていますが、郵便局員等を装って管理人を騙してアパート内に侵入し、住人が安心してドアを開けたところで強盗になるという事件も発生していますので、訪問者を安易に入れない等の注意が必要です。
外出する場合は、常になんらかのリスクが伴うとの認識が必要です。日中においても薄暗い路地を避けて人通りのある道を選んだり、毎日同じ道を通らず、時にはルートを変えるよう心がけてください。また、オートバイを利用したひったくり被害に遭わないため、
等に努めてください。
さらに、帰宅時を狙われるケースも少なくありませんので、車の乗り降りは自宅駐車場内で行うようにするとともに、自宅付近に不審者・車が認められる場合には無理に帰宅せずやり過ごし、アパート門番や警察に通報して安全確認を行ってから帰宅するといった配慮も必要です。
自宅に訪問者があった時、いきなり玄関を開けることは非常に危険です。あらかじめ訪問者が予想される場合でもドア越しに相手を確かめてから対応することが基本です。また、使用人等の中には盗みの手引きをする者がいないとも限りませんので、雇用される際は身元を確認するのは当然のこと、鍵を預けたり不在期間を明確にしない等の配慮が必要です。
当国では、2010年1年間で23,249人もの人が交通事故で命を落としており、交通事故の発生件数は世界第一位とされています。そもそも、当国の交通事情は以下のとおり日本とは全く異なっており、細心の注意が必要です。従って、車に乗車する場合は必ずシートベルトを締めてください。また、歩行中も周囲の車、オートバイに常に注意してください。
(1) 概要
イランは、米国及びイスラエルと外交関係を有しておらず、米軍基地、米国大使館、欧米資本によるショッピングセンター等の標的となり得る欧米権益も存在しないことから、反米のイスラム系過激派等による大規模なテロ事件等が発生する可能性は低いと言えます。また、イラクを拠点としていた反政府武装組織MKO(モジャヘディーン・ハルグ・オーガニゼーション)は、イラクのフセイン政権崩壊後、実行部隊を失い、近年、イラン国内で同組織によるテロ活動は発生していません。
しかし、イラン南東部においては「ジュンドッラー」と呼ばれるイスラム教スンニ派の反政府組織が、また、北西部においては「PJAK」等クルド人反政府組織が、それぞれイラン政府機関や治安機関等を標的としたテロ行為を行っています。
また、テヘラン市内においても、特定の人物を標的にしたと思われる爆弾テロ等が数件発生しています。
(2) 最近の国内の爆弾テロ事件について、報道されているものは以下のとおりです。
平成23年中(11月現在)、大規模爆弾テロは発生していませんが、「爆弾テロを計画していた者を当局が逮捕した」という報道がしばしばみられる他、7月から9月にかけて、イラン北西部国境付近では、PJAKとイラン軍・治安当局が継続的に戦闘を行う等、依然テロ情勢には注意が必要です。
爆弾テロ事件に巻き込まれないためにも、治安関係施設には近寄らず、また不特定多数が集まる場所への立入を極力控える他、最新の治安情報を常に入手するよう心がけて下さい。
(3) シスタン・バルチスタン州及びケルマンシャー州では外国人を対象とした誘拐事件が多発しています。平成19年10月の邦人旅行者誘拐事件の他、平成19年8月にもベルギー人旅行者2名が武装麻薬密輸団に誘拐される事件が発生(同年9月解決)しています。従って、国内旅行を予定している方は、これらの州には立ち入らないことが重要です。
大使館では、定期的に当国に関し「危険情報」、「スポット情報」を発出しています。当館のウェブサイトから、最新情報の収集に努めてください。
このマニュアルとは別に、緊急事態対処マニュアルとして「緊急事態に備えた心得」を作成し、領事窓口で配布しております。
また、防犯の参考となるビデオの貸し出しも行っておりますのでご利用ください。
在留届は旅券法16条により、外国に3ヶ月以上滞在する日本人は、最寄りの大使館に届出をすることが義務づけられております。これは、皆様が当地に滞在していることを連絡していただき、在外公館より緊急連絡を受ける際の基本的な資料となるものです。在留届を提出していると次のようなサービスが受けられます。
当地は、日本のように「110番すれば警察官が数分で到着する。」という国柄ではありません。道路通行中に緊急事態が発生した場合は、付近の商店等に飛び込む、大声で付近に助けを求める等の行動が効果的です。大きな交差点においては配置されている交通警官に助けを求めることもひとつの手段です。警察への連絡は日本の「110番」に相当する110番通報(テヘラン警察本部)が整備されていますが、英語で対応できる者が少なく、特に夜間は、ペルシャ語しか通じない場合もありますのでご注意ください。
防犯において、慢心は禁物です。「慣れ」は時として落とし穴となり、重大な禍を招く結果になることがあります。
皆様におかれては、当地での滞在を実り多いものにするためにも、常に防犯意識をお持ちいただくようお願い申し上げます。