在留邦人向け安全の手引き 在ハンガリー日本国大使館

在外公館がまとめた安全の手引きです。海外の在留邦人が、事件や事故に巻き込まれないために留意すべき事項の他、(必要に応じて)戦争、暴動等の緊急事態への備えと緊急時の対処方法が記載されています。


安全の手引き

平成25年2月1日
在ハンガリー日本国大使館

目次

はじめに

1 ハンガリーの治安情勢

2 邦人の被害状況

3 具体的防犯対策

4 交通安全情報

5 緊急連絡先

6 緊急時の簡単なハンガリー語

おわりに

はじめに

ハンガリーを治安の面から見れば、大規模テロリズムや暴動、クーデター等の危険性は他国に比べ低く、一般犯罪の被害に遭う可能性が相対的に高いと言えます。残念ながら、現実に毎年多数の旅行者や在留邦人が、すりや置き引きを始めとする犯罪被害に遭っています。

そこで当館は、皆様の安全対策の一助となるよう「安全の手引き」を作成しました。ここ数年間で邦人が被害に遭った実際の事件を題材に、犯行の具体的な手口と効果的な対策を紹介しています。是非ご活用下さい。

1 ハンガリーの治安情勢

ハンガリーの年間犯罪認知件数は、1998年の約60万件をピークとしてその後減少傾向を辿り、ここ数年間は40万件前後で推移してきました。

ところが、2010年を境に上昇に転じ、同年の犯罪認知総件数は44万7,186件と大幅に増加(前年比13.5%増)。続く2011年も45万1,371件に増加しました(前年比1%増)。

治安悪化の原因については諸説ありますが、一般に失業率が高く、社会保障制度が充実していない県(特に北西部4県)ほど犯罪発生率が高いことから、リーマンショック後の不況に伴う失業者と貧困層の増大が最大要因との見方が有力です。

2011年の人口千人当たりの犯罪認知件数は44.65件であり、日本の11.63件に比べ、約4倍という高い数値を示しています。言い換えれば、単純比較でハンガリーは日本に比べて被害者になる確率が約4倍高いということです。

ハンガリーの犯罪全体のうち、財産に対する犯罪は約61%で、その約52%を窃盗が占めています。その一方、殺人や傷害等の身体犯罪は全体の約3.6%に過ぎません。

つまり、在留邦人や旅行客は、日本よりも遙かに劣悪な治安情勢の中、まずは窃盗に気を付けなければなりません。

(グラフ)ハンガリーの犯罪認知件数と邦人被害数の推移

2 邦人の被害状況

(1)概論
  • 2012年に邦人が被害者となった犯罪の認知件数(大使館に報告のあった件数)は、39件です(前年比3件減)。
  • すり(21件)と置き引き(5件)が、全被害のちょうど3分の2を占めます。
  • 強盗未遂(1件)以外、殺人や強姦、誘拐等の凶悪事件の被害報告はありません。
(2)傾向(詳細な犯行手口は後述)
ア すり被害の多発

2012年の傾向として、前年に引き続きすり被害の多発が最初に挙げられます(全被害の約54%)。2010年には4件だったすりが、2011年には22件に急増。その流れに変化はありません。

前年に引き続き、

  • 被害者を尾行し、立ち止まったり何かに気を取られたりした瞬間に一気に間合いを詰め、犯行に及ぶ
  • 特に被害者が写真撮影中を狙う

という手口が目立ちます。

また、2012年は初めて「裁ち切り」被害が1件報告されました。「裁ち切り」とは、被害者の衣類のポケットや鞄を刃物で裁ち切って財布等をする手口で、イタリアやスペイン等の南欧諸国ではごく普通にみられますが、ハンガリーでは稀です。過去、裁ち切りによる被害報告は1件もありませんでした。

イ 2年ぶりに強盗が発生

在留邦人が散歩中、尾行してきた二人組の男に目に催涙スプレーを吹き付けられ、肩に掛けていた鞄を奪われそうになりました(未遂)。

ウ 偽警察官による詐欺盗被害の増加

発生報告は例年1~3件ですが、2012年は5件ありました。

エ 3年ぶりにホステルでのホテル荒らしが発生

ホステルと呼ばれる簡易宿泊施設での窃盗(ホテル荒らし)が3年ぶりに報告され、3件を計上しました。

オ 中国系住民とみられる者からの在留邦人に対する嫌がらせ事案の発生

尖閣諸島を巡る日中関係の緊迫化を受け、2012年9月に入り、在留邦人がスーパーマーケットや路上で、中国系住民とみられる者に因縁を付けられる事案が4件報告されました(これらは犯罪を構成しないため、邦人被害件数には計上せず)。

「ヤパーン(日本人)?」とハンガリー語で話し掛けてくるケースもあれば、無言で付きまとうケースもあります。いずれの事案も、中国語らしき言葉で罵られたり付きまとわれたりしただけで、殴られるなどの物理的被害は発生していません。この様な事案は近隣諸国では報告されておらず、ハンガリーに特有の現象です。

事態の一時沈静化に伴い、10月以降現在まで、同種事案の報告はありません。しかし、事態が再び緊迫化すれば同種事案が発生するおそれがあります。

(3)被害発生都市

例年、ほぼ全ての被害がブダペストで発生しており、2012年は、被害地が判明した全ての被害がブダペストでした。

この数字は、在留邦人の約70%がブダペストに住み、観光客もブダペストに一極集中しているという邦人の滞在分布を反映しているにすぎず、ブダペストが危険で、それ以外の市町村は安全ということではありません。

(グラフ)被害発生都市

(4)在留邦人と旅行者等の被害者比率

在留邦人の中には、「犯罪被害に遭うのは旅慣れていない旅行者であって、自分はこの土地に慣れているから大丈夫」と考える人もいます。確かに、偽警察官による詐欺盗とぼったくりに限れば、例年被害者は旅行者や出張者が圧倒的多数を占め、これらの対面犯罪では、外国慣れしている在留邦人の警戒心の高さが際立っていると言えます。

しかし、被害全体で見れば、2011年は被害者の約3分の1、2012年は約4分の1が在留邦人ですので、当地での居住歴が長い方も十分お気を付け下さい。

(グラフ)在留邦人と旅行者等の被害者比率

(5)被害罪種と手口分析

(グラフ)被害罪種と手口分析

ア すり:21件
  • 下の表をご覧になれば、①有名観光地、②駅構内、③公共交通機関において、いかにすりの被害が多いかご理解いただけると思います。
    【すり被害場所一覧】
    2011年 2012年
    場所 件数 場所 件数
    漁夫の砦 4件 中央市場 4件
    マーチャーシュ教会 3件 地下鉄 4件
    聖イシュトバーン大聖堂 2件 ドゥナ・コルソ(遊歩道) 2件
    鎖橋 2件 バス(7番と16番) 2件
    ヴァーツィ通り 2件 電車 2件
    バス(16番) 2件 地下鉄駅構内 2件
    トラム(2番) 2件 トラム(2番) 1件
    地下鉄(3号線) 1件 聖イシュトバーン大聖堂 1件
    中央市場 1件 漁夫の砦 1件
    駅構内(南駅の券売所) 1件 鎖橋 1件
    スーパーのレジ待ちの列 1件 ヴァーツィ通り 1件
    高速道路SAの売店 1件
  • 地下鉄では、1号線で1件、2号線で1件、3号線で2件発生しています。
  • ドゥナ・コルソでは、被害者が写生中に1件、写真撮影中に1件発生しています。いずれも被害者が被写体に気を取られた隙を狙っての犯行です。
  • バスでは、7番で1件、16番で1件発生しています(未遂)。7番バス内で、前述の「裁ち切り」被害が発生しました。
    16番バスは車体が通常のバスよりも小さく、王宮の丘へ向かう観光客でいつも混雑しています。16番は通称「すりバス」で、各国の観光客が多数被害に遭っている最も危険な路線です。
    すりが多い公共交通機関として地元住民に知られているのは、
    • 地下鉄の全線
    • トラムの2・4番
    • 市バスの7番・16番
    ですが、邦人の被害状況はそれを裏付けています。
  • 電車では、ウィーンからの国際列車内で1件、ブダペストからセゲドに向かうインターシティ(IC)内で1件発生しました。
  • 駅での被害は、被害者が地下鉄デアーク広場駅で地上に出るエスカレーターに乗っている際、背後に立った男にショルダーバッグから財布を抜き取られた事件が1件。
    もう1件は、被害者が、地下鉄オクトゴン駅の券売所で切符を買おうとしましたが、言葉が通じないため窓口係員とのやり取りに熱中している隙に、体の背後に回したショルダーバッグからカメラを盗まれました。
  • 漁夫の砦と鎖橋は、いずれも被害者が写真撮影中の被害です。前者の被害では、犯人が鎖橋から被害者をずっと尾行し、被害者が漁夫の砦で写真撮影を開始した時に犯行に及んでいます。
イ 置き引き:8件
【置き引き被害場所一覧】
2011年 2012年
場所 件数 場所 件数
レストラン 5件 レストラン 1件
喫茶店 1件 喫茶店 1件
東駅到着の国際列車内 1件 ショッピングセンター 1件
地下鉄駅券売所 1件 公園 1件
空港 1件
  • レストランでの被害は、インターコンチネンタルホテルの朝食会場で発生しました。被害者がビュッフェ台に食事を取りに行った隙に、席に置いていた鞄を盗まれました。
    ホテルの朝食用レストランは、たとえ五つ星でも、誰もが比較的自由に出入りできるホテルがありますので、油断は禁物です。
  • 喫茶店での被害は、ジェルボーのテラス席で発生しました。被害者が席に座ってガイドブックを読んでいたところ、足下に置いていた鞄が盗まれました。
  • ショッピングセンターでの被害は、ブダペスト市8区のアリーナ・プラザで発生しました。被害者が買い物中、ショッピングカートを置いて少し離れた棚に商品を取りに行っている隙に、同カートの子供用台座に置いていた鞄を盗まれました。
  • 公園での被害は、ブダペスト市12区のノルマファ公園で発生しました。被害者がベンチで休憩中にうとうとしてしまい、気が付けば自分の脇に置いてあった鞄を盗まれていました。
    ノルマファ公園は市民の憩いの場ですが、そこに集まる家族連れを狙った置き引きと車上狙いのメッカとして地元では有名です。
  • 空港での被害は、ロビーで発生しました。
ウ 侵入盗:5件
  • ホテル荒らしが3件で、いずれもホステルで発生。ホステルは料金が安い反面、ハード・ソフトの両面でセキュリティが甘いという欠点があります(それを補完するのが個人の警戒力です)。
    被害概要は次のとおり。日本人は枕の下に鍵や貴重品を隠す人が多いのですが、それでは隠したことになりません。
    • ① 部屋に金庫はあったが、被害者がその鍵を枕の下に隠したため犯人に発見され、金庫内に保管していた現金とパソコンを盗まれた(個室)。
    • ② 被害者が朝起きると、ベッドの下に置いてあったリュックサックから現金とパソコンが盗まれていた(大部屋)。
    • ③ 被害者がシャワーを浴びに行った際、財布を枕の下に隠したが、シャワーから戻ってくると盗まれていた(大部屋)。
  • 空き巣は2件。1件は、被害者が朝目を覚ますと、寝る前にはあった財布やパソコン、iPhoneが盗まれていました。玄関ドアの鍵を壊して室内に侵入されましたが、被害者は物音に全く気付きませんでした。
    もう1件は、被害者が自宅ガ-レジに侵入され、自転車(時価10万円相当)を盗まれました。
エ 偽警察官等による詐欺盗:5件
  • 被害者は、全員観光客です。
  • 発生場所は、東駅、バッチャーニ広場、ヴァーツィ通り、ドゥナ・コルソ及びデアーク広場です。いずれも観光客が集まる場所で、犯人はそこで多数の観光客の中から「獲物」を物色しています。
    警察によれば、犯罪者の間で「日本人は従順で騙し易い」と評判で、集中的に狙われています。味をしめた犯人がまた日本人を狙うという悪循環に陥っているのが現状です。
  • 複数の犯人が任務分担し、声掛け役が声を掛け、そこに刑事役が現れて捜査と称して財布を出させ、現金やクレジットカードを抜き取るという手口は、ここ15年以上変わりません。
  • 犯行時の使用言語は、全て英語です。
  • 声掛け役の会話の端緒は、
    • 地理案内の依頼:3件(国会、鎖橋、オペラ座)
    • 風景の質問:1件(エルジェーベト橋を指し、「あの橋の名前が分かるか」と質問)
    • 私服刑事を騙った偽の職務質問:1件
    です。
  • 一方、刑事役が被害者の財布を出させる口実は、
    • 偽札捜査:2件
    • 薬物捜査:2件
    • 違法両替捜査:1件
    です。
  • 被害品は、クレジットカードが3件、現金が2件です。
    クレジットカードが抜き取られた全ての事件で、事後にATMから現金が引き出されるという2次被害が発生しています。いずれも被害者が犯人に暗証番号を教えたことが原因です。
    3件中2件は、自称刑事の犯人が被害者の財布の中にクレジットカードを見つけ、「これはお前のものか。自分のものなら暗証番号を知っているはずだ。言ってみろ」と命じ、被害者はそれを教えました。
    もう1件は、犯人がクレジットカード読取用端末の様な機械を差し出し、「クレジットカードが本物かどうか調査する。暗証番号を入力しろ」と命じ、被害者が入力したものです。
オ 車上狙い:1件

被害者がオクトゴン交差点で友人と待ち合わせましたが、約束の時間になっても友人の姿が見当たらないため、路上駐車して探しに行きました。

その際、車に施錠するのを忘れたため、友人と車に戻ったところ、トランクから鞄が盗まれていました。

カ ぼったくり:1件

観光客が「3 具体的防犯対策」で紹介する古典的手口により、30万フォリントを騙し取られました。

被害場所はヴァーツィ通り。ぼったくりレストランへの引き込み役は、自称イタリア人の若い女性二人組で、声掛けの端緒は道案内でした。

キ 路上強盗未遂:1件

被害者がルダシュ温泉を出て、夕涼みがてらゲッレールトの丘を目指して遊歩道を散歩していたところ、少年2人に尾行されていることに気付きました。不審に思い、靴の紐をゆっくり結び直してやり過ごしたのですが、立ち上がった瞬間に2人は反転し、被害者の顔に催涙スプレーを吹きかけた後、ショルダーバッグを奪おうとしました。

被害者は目の痛みをこらえながら抵抗し、全力で走ってその場から逃げました。

3 具体的防犯対策

(1)住居選定に当たっての具体的注意事項

住居の防犯対策上、念頭に置くべき犯罪は、空き巣や忍び込み等の侵入盗及び侵入強盗です。

ア 住居選定に当たっての注意事項

個人の好み(「庭付き物件が良い」など)や予算の都合もありますので、以下の物件を絶対に借りてはいけないという訳ではありません。しかし、防犯だけの観点から見れば、積極的にお勧めはできません。

(ア)在留邦人が、治安を理由に敬遠している地域の物件
治安の悪い地域はその分家賃も安いのですが、ご自身の安全と家賃を秤に掛けた場合、優先すべきは安全です。
(イ)誰でも外部から部屋の玄関まで来られる物件
泥棒や強盗が室内に辿り着くまで、鍵、つまり彼らにとっての障害物が多ければ多いほど、防犯性は高まります。①周囲の塀やフェンスの門扉、②建物の共有玄関、③自室の玄関の3か所に鍵があることが理想です。
(ウ)地上階の物件
高層階に比べ、地上階は外部からの侵入が容易です。しかし、高層階だから100パーセント安全ではなく、例えば、鉄製の雨樋をよじ上って2階のベランダに侵入する泥棒もいれば、屋上から最上階の部屋のベランダにロープを垂らして侵入する泥棒もいますので、ベランダ付近や屋上の構造にもご注意下さい。
(エ)ガレージのない物件
路上駐車は、車両窃盗や車上狙いの危険性が大です。
イ 居住開始後の注意事項
(ア)確実な施錠
最近の邦人被害者に多いのは、被害当時、ご自宅の窓や玄関が無施錠であったことです。意外に思われるかも知れませんが、最大の防犯は、「確実な施錠」です。「家に人がいるのだから、まさか泥棒は入って来ないだろう」と思って在宅中は鍵を掛けない方や、「2階(以上)だから、大丈夫」と思ってベランダに鍵を掛けなかったり、窓を開放したまま就寝したりする方もいますが、大変危険です。
(イ)来訪者の確認
  • 来訪者があった場合、ドアスコープやインターフォン等で必ず相手を確認してから玄関ドアを開ける。その際、チェーン錠は掛けたままにしておく。
  • 自宅の修理等で業者が訪問する場合、事前に日時を決めさせる。不審に思った場合、業者の事務所等に問い合わせをする。
(ウ)防犯環境の整備
  • 合鍵を集合ポストや植木鉢の下等に置かない。泥棒は独自の嗅覚を持っており、「まさかここに隠してあるとは分からないだろう」と思っても、すぐに悟られてしまいます。
  • 脚立やポリバケツは、泥棒が侵入するための足場になるので、鍵の掛かる場所に保管する。
  • 「エアコンの室外機がちょうど足場になる」「庭木や雨樋が、ベランダへのはしご代わりなる」等の構造上の問題は、直ちに大家に改善を申し入れる。
ウ 長期不在時の防犯対策
  • 大家や管理人に、「しばらく留守にする」と伝えて、定期的な見回りを依頼する(会社の同僚や親しい友人に鍵を預けて依頼してもよいかもしれません)。
  • チラシが郵便受けに溜まっていると、留守宅であると泥棒に悟られてしまいますので、管理人等に定期的な除去を依頼する。
  • 悪意のある人間にその情報が伝わらないとも限らないので、「しばらく日本に帰る」などと周囲の人に吹聴しない。
  • タイマーや感光式で点灯・消灯ができる照明があれば、活用する。
  • 警報装置を備えているお宅は、確実にセットする。
(2)外出時の具体的注意事項
ア すり・置き引き対策
  • 手口を分析しますと、これらの被害の殆どは、被害者や周囲の人がほんの少しの注意を払うだけで防止できたと考えられます。人混みには、すり・置き引きが必ずいるとの前提で行動をお願いします(実際にいます)。
  • 「裁ち切り」対策としては、外出時、皮革等の丈夫な素材でできた鞄を使うことをお勧めします。
  • すりに関して、最近は次の2つの傾向が顕著です。
(ア)土産を買ったり入場料を払ったりした直後の被害
財布の在処や大きさが事前に分かっていれば、すりが成功する確率は飛躍的に高まります。したがって、すりは土産物店(特に路面店)や観光名所の入場料支払窓口周辺で、「獲物」を物色しています。
そして、支払いを終えた被害者が財布をどこに仕舞うか確認後、人混みに紛れて被害者に接近して財布をすり取り、現場から離脱します。
【対策】
  • 持ち歩く現金は、最小限(その日に使う分だけ)に留める。
  • 「財布」と小額の紙幣や硬貨を入れた「小銭入れ」とを使い分ける。財布は鞄の奥底に収納し、必要のある時以外は出さない。
  • 日本にいる時と同じ感覚で、上着の胸ポケットやズボンのポケット、ウエストポーチ等に無防備に財布を入れない。
  • 外出時は、ファスナー付きの内ポケットを備えた鞄を使う。この構造の鞄であれば、すりは外側のファスナーを開けた後、さらに内側のファスナーを開けなければならず、被害者に気付かれずに中身をすり取ることは困難。
(イ)写真撮影中の被害
すりにとって理想の「カモ」は、写真を撮っている人です。「王宮の丘の路面店で土産を買い、そのまま尾行されて漁夫の砦で写真撮影中に財布をすり取られる」というのが、ここ数年の邦人の典型的被害パターンです。
【理由】
  • 被害者が立ち止まって動かない(腕の良いすりであっても、動いている対象から財布等をすり取るのは中々難しい)。
  • 被害者は被写体に意識が集中し、手荷物への注意力が散漫になっている。
  • 景色が良い場所だと、他の観光客もそちらに気を取られている。
  • 被害者の両手が塞がっている。
【対策】
  • 写真を撮る前に、周囲にすりらしき怪しい人物がいないか確認する(特に尾行者に注意)。
  • 家族や友人を撮影する場合、その人に自分の周りを注意してもらう(被写体からは、撮影者に近付く不審者がよく見える)。
【その他の代表的手口と対策】(過去の邦人被害の実例から抜粋)

例1 被害者が地下鉄に乗って立っていると、少女3人に取り囲まれた。「オペラ、オペラ」と言うのでオペラ座への行き方を尋ねているのだと思い、彼女らが広げた地図を見ながら案内してやった。彼女らは、なぜかオペラ座からは遠い次の駅で降りてしまった。
その後、ウエストポーチのファスナーが開いており、中から財布が盗まれていることに気付いた。

→ 地図を広げてウエストポーチを目隠しする役、話し掛けて被害者の気をそらす役、実行役が任務分担し、かつ、駅に到着する直前に犯行に及ぶことで、逃走路を確保する典型的な集団すりの手口。
万一被害に遭っても、その被害を最小限にするため、財布やパスポート等の貴重品は分散して所持する(できるだけ身に付ける)。また、ウエストポーチは、「ここに貴重品が入っています」と宣伝しているのと同じ。使うのであれば、貴重品は入れない。

例2 被害者が地下鉄のセール・カールマーン広場駅で、上りエスカレーターに乗っていたところ、後ろに立っていた男に、ショルダーバッグのファスナーを開けられた(窃盗未遂)。

→ 混雑した車内やエレベーター、エスカレーター、駅の券売所等では、ショルダーバッグやリュックは必ず身体の正面に持ってきて、抱きかかえるように持つ。

例3 ビュッフェ方式のレストランで、料理台が席の2m先にあったので大丈夫と思い、空いている席に鞄を置き、その上にコートを被せて隠し、料理を取りに行った。食事を終えてコートを取ったところ、下に置いたはずの鞄がなくなっていた。

→ レストランでの飲食時は、常に所持品を視界に入れておく(床に置いたり、背もたれに掛けると視界から消えてしまう)。
ビュッフェで料理を取りに行く時やトイレに立つ時は、たとえ短時間であっても所持品を携行する。

例4 被害者が国鉄南駅の券売所で切符を買おうとしたところ、英語が通じなかった。身振りを交えて必死に説明し、何とか切符を買うことができたが、足下に置いていた鞄が盗まれていた。

→ 本件は偶発的ではなく、駅の窓口や自動券売機において、切符の買い方に不案内で、それに専念するあまり荷物への注意が散漫になってしまう旅行者を狙い撃ちにした犯行。駅やその周辺は犯罪者の巣窟と言っても過言ではない。
切符を買う時は、鞄を体の前面でしっかり持つ。家族や友人が一緒なら、1人が切符の購入、もう1人が周囲の警戒という風に任務分担する。

イ 強盗、ひったくり、強姦等の路上犯罪対策

邦人に対する路上犯罪は、頻繁ではありませんが、年1件程度報告があります。2012年の強盗未遂を除きいずれも夜間であり、人通りのある場所で白昼堂々襲われることは、まずありません。ですから、これらの犯罪は「夜間、人通りの少ない場所に近付かない」ことでほぼ予防可能です。

但し、これで100%路上犯罪を予防できる訳ではありません。複数で行動するなど、以下に述べる対策を二重三重に組み合わせることが肝要です。

「携帯電話で通話中の人が襲われることはない。何かあると通話相手が代わりに警察に通報してくれるから、犯人は嫌がる」と信じ、電話しながら夜道を一人で歩いている人がいますが、完全な誤解です。電話のせいで犯人の足音に気付かないなど、逆に墓穴を掘ることになります。通話相手も、正確な事件発生場所がどこか分かりません。

【対策】
  • 日本と比べて街灯の数が少なく、都市の中心部であっても薄暗い場所が多くあるので、必要がない限り夜間の外出は控える(特に深夜)。
  • 夜間に外出する際は、常に周囲に注意を払い、不審者への警戒を怠らない。不審者を発見した場合、人目のある場所に直ちに移動する。
  • 夜間は単独行動をしない。
  • 夜間の移動には無線タクシーを利用する(老若男女を問わず、飲酒後、タクシー代を惜しんで暗い夜道を歩いて帰宅する人がいますが、数千フォリントと自分の身の安全と、どちらが大切かは明白です)。
  • 貴重品はなるべく持ち歩かない。携行する場合は、外から見えないように身に付ける。また、ひったくりに備え、鞄をたすき掛けにしたり、車道と反対側の手に持つなどの工夫をする。
  • 不幸にも強盗やひったくりに遭ってしまった場合、自分の生命・身体の安全を最優先とし、むやみに抵抗しない。
ウ 列車内のすり・置き引き対策

ここ数年、在留邦人、旅行者を問わず、列車内(特に東駅発の国際列車)でのすり・置き引き被害が多発していました。2012年の被害報告はありませんが、2009年には邦人被害の半分をこれらの犯罪が占めていました。

手口は非常に古典的で、被害者が列車に乗込み、あとは出発を待つばかりという気の緩むタイミングを狙って、2人組が犯行に及びます。出発直前を狙うのは、犯人が犯行後すぐに列車外に逃走することで、被害者による追跡を避けるためです。

地元警察によると日本人だけが集中的に狙われていますが、いずれの犯行も、手口をよく理解した上で警戒していれば予防可能です。

【頻発している手口】(過去の邦人被害の手口を類型化)
例1 犯人の1人が、「コンニチハ」などと片言の日本語で話しかけ、被害者が相手をしている隙に、もう1人が座席に置いた鞄を窃取(又は財布等を抜取り)。
例2 犯人の1人が、大きい荷物を持っている被害者に「網棚に載せてあげましょう」と話し掛け、荷物に気を取られている隙に、もう1人が座席に置いた鞄を窃取(又は財布等を抜取り)。
例3 被害者がコンパートメントに入室した直後、犯人の1人が外から、何かを叫びながら窓を強く叩き、被害者が窓際に近寄った隙に、もう1人が座席に置いた鞄を窃取(又は財布等を抜取り)。
例4 犯人の1人が、着席している被害者に対し、「ここは私の席だ。切符をよく確認しろ」と因縁をつけ、被害者がそれに気を取られている隙に、もう1人が座席に置いた鞄を窃取(又は財布等を抜取り)。
例5 出発直前に、「オー、マイガッ」などと叫び、乗る電車を間違えた振りをして、網棚にある他人の鞄をひったくって電車外に走り去る(たとえ誰かに捕まっても、「慌てていて、自分の鞄と間違えた」と言い逃れができる)。
(3)自動車盗・車上狙い対策

2010年は2件の被害報告がありましたが、2011~12年は報告がありませんでした。しかし、ハンガリー全体で自動車盗が減っている訳ではなく、例えば大使館が所在し邦人も多く住むブダペスト市12区だけで、週に平均3~4台の車が盗まれています。

被害の多くが路上駐車中に発生していることから、ガレージ付のアパートを借りたり、原則として有人駐車場を使うことが対策の第一歩です。

「BMWやアウディ等の高級車が盗まれ易い」と一般に信じられていますが、管理の緩い、盗まれ易い車が盗まれているだけで、車種による顕著な盗難傾向はありません。

また、車は盗まれなくても、窓ガラスを割るなどして、車内からカーステレオやカーナビゲーション等を盗み出す「車上狙い」被害も多発しています。「貴重品を車内に置かない」「車を離れる際は、短時間でも必ず施錠する」「盗難防止装置を取付ける」などの基本的な防犯対策が重要です。

【代表的手口と対策】(過去の邦人被害の実例から抜粋)

例1 食事のため路上駐車し、1時間後に戻ったら車を盗まれていた。コンソールボックスに運転免許証、車検証、自動車保険証書を入れていたので、まとめて盗まれた。

→ 路上駐車はなるべく避け、有人の有料駐車場を利用する。やむを得ず路上駐車する場合は、貴重品は全て車外に持ち出し、かつ駐車時間を最小限にする。

例2 翌日から自動車旅行に行くことにしていたが、早朝の出発である上、荷物が大量だったので、前日の夜からそれらを積み込んでおいた。翌朝ガレージに行くと、窓ガラスが割られ、荷物がすべて盗まれていた。

→ 荷物は、出発直前に積み込む。

例3 自宅玄関の鍵を掛け忘れたところ、泥棒に入られた。玄関付近が荒らされただけで、室内に被害はなかったが、玄関に置いていた車の鍵がなくなっており、ガレージに停めていた車が盗まれた。

→ 自宅玄関に車の鍵を置かない。

例4 スーパーで買い物後、品物を車のトランクに積み、カートを元に戻そうと、ドアをロックしないまま車から離れたところ、その隙に助手席に置いていた貴重品在中の鞄を持ち去られた。

→ 大型ショッピングセンターの駐車場には、車上狙いを目的とした泥棒が常にいる。たとえ僅かな時間でも、必ずドアをロックする。

例5 仕事先へ行くのに路上駐車し、車に戻ってドアを開け、鞄を助手席に放り投げた後、運転席に乗り込んだところ、助手席ドアを外側から開けられ、鞄を持ち去られた。

→ 車に乗り込んで最初にすべきことは、「車のロック」。エンジンの始動やシートベルトの装着は、その後。

(4)特異な犯罪対策
ア 偽警察官による詐欺盗

1990年代後半から現在まで、警察官を装った男らに金品を窃取される被害が毎年数件発生しています。複数犯による巧妙な手口が特徴ですが、手口をよく理解した上で落ち着いて対応すれば100%予防可能です。

【代表的手口】(過去の邦人被害の実例を類型化)

例1 観光中、外国人の男が地図を示しながら、英語で道を教えて欲しいと話しかけてきた。相手にしていたところ、警察バッジのようなものを提示しつつ、英語で刑事を名乗る別の男が突然現れ、「路上での両替は違法だ。身分証と財布を見せろ」と言ってきた。

道を尋ねた男は素直に自称刑事に財布を渡し、「君も見せた方がいい」と言ったので、被害者もつい財布を渡してしまった。その後の展開は次の4パターン。

(パターン1)
自称刑事は、紙幣を確認後、財布を被害者に返却。道を尋ねた男と自称刑事は、別方向に立ち去った。
その後、被害者が財布の中身を確認したところ、高額紙幣だけが抜き取られていた。

(パターン2)
自称刑事は、財布の中身を確認後、「このクレジットカードはお前の物か」と聞いてきたので、被害者は自分の物だと主張。「では、暗証番号を言ってみろ」と言うので、つい暗証番号を教えてしまった。それを聞いた自称刑事は、財布を被害者に返却。道を尋ねた男と自称刑事は、別方向に立ち去った。
その後、被害者が財布の中身を確認したところ、クレジットカードが抜き取られており、限度額一杯まで現金が引き出されていた。

(パターン3)
自称刑事は、財布の中身を確認後、「このクレジットカードはお前の物か」と聞いてきたので、被害者は自分の物だと主張。すると「では、機械で確認する」と言ってカード読取用端末の様な機械を取り出し、それにカードを通した。その後、自称刑事は財布やカードを被害者に返却。道を尋ねた男と自称刑事は、別方向に立ち去った。
2日後、クレジットカード会社から通報があり、何者かにオーストリアで限度額一杯まで買い物をされていることが分かった(目の前でカード情報をスキミングされ、クローンを作られてしまった)。

(パターン4)
自称刑事は、財布の中身を確認後、「このクレジットカードはお前の物か」と聞いてきたので、被害者は自分の物だと主張。すると「では、機械で確認する」と言ってカード読取用端末の様な機械を取り出し、暗証番号の入力を要求した。被害者は言われるままに暗証番号を入力。それを見た自称刑事は、財布やカードを被害者に返却。道を尋ねた男と自称刑事は、別方向に立ち去った。
その後、被害者が財布の中身を確認したところ、クレジットカードが抜き取られており、限度額一杯まで現金が引き出されていた。

例2 観光中、外国人の男が、「コンニチハ」と話し掛けてきた。英語で”I love Japan.”などと言うので相手にしていたところ、警察バッジのようなものを提示しつつ、英語で刑事を名乗る別の男が突然現れ、「お前ら、薬物を売買しているだろう。警察署に来い」と言ってきた。

話し掛けてきた男は、「言い掛かりだ。嘘だと思うなら、ここで身体検査をしてもいい」と自ら身体検査を申し出た。検査後、「君も調べてもらって、身の潔白を証明した方がいい」と言ったので、被害者もつい自称刑事に身体検査を許した。

検査後、自称刑事は「行っていい」と吐き捨てて立ち去り、話し掛けてきた男も別方向に立ち去った。

その後、被害者は尻ポケットに入れていた財布が盗まれていることに気付いた。

【対策】
  • 話し掛けて来る人がすべて泥棒や詐欺師とは言えませんが、見知らぬ人は基本的に信用しない。「人を見たら泥棒と思え」との警句は、外国では、あながち間違いではありません。
  • 「コンニチハ」等と声を掛けられても、無視するか、英語等で返答する(日本人を物色中の犯罪者による「当たり」行為の可能性あり)
  • 両替や薬物の購入を持ち掛けてくる者が接触してきたら、無視してその場から素早く立ち去る。
  • ハンガリーの警察官は、その身分及び適法な職務執行を証明するため、身分証及び警察章(バッジ)の両方を市民に提示する義務がある(たとえ私服警察官(刑事)であっても、その提示義務は免除されない)。よって、警察官を名乗る人物から所持品検査等を要請された場合、相手に必ず身分証の提示を求める(下記写真参照)。
    なお、ハンガリーの警察官が路上で違法両替の捜査をすることはない。
  • 少しでも不審な点があれば、「日本大使館に連絡して欲しい」「警察署でなら応じる」などと主張したり、その場で107か112(日本の「110番」に相当)に電話するなどして、相手を牽制する。実際、本人の目の前で日本大使館に電話した途端、自称刑事がその場を立ち去った例もあります(防犯のファインプレーです。)。
【警察官が提示を義務付けられているバッジ(上)及び身分証(下)】
イ ぼったくり
【手口】
① 土地勘のない観光客を標的としているため、発生場所は、ブダペストのヴァーツィ通り及びその周辺に集中。
② 引き込み役は、路上のいわゆる「客引きの兄ちゃん」のほか、ぼったくりバー/レストランから分け前をもらっているタクシー運転手や若い女性。
③ 若い女性の場合、会話の糸口として道を尋ねてくる。それは単なる口実であり、言葉巧みにぼったくりバー等へ誘き寄せる。
④ 引き込み役は、被害者に犯行場所を記憶させないため、声を掛けた場所からレストランへ直行せず、遠回りしたり、右左折を繰り返す。
⑤ 店内に入ると、被害者の判断力を奪うため、酒を飲ませる。
⑥ 法外な値段を請求されて被害者が抗議すると、注文の時とは別の「裏」メニューを店員に見せられることがある。「金額はここに書いているとおりだ。知ってて注文したんだろう」とすごまれた被害者は、「酔っ払って気付かなかったのかな」と半信半疑のまま代金を支払ってしまう。
⑦ 被害者が、「そんな大金はない」と開き直ると、店員は「ならばクレジットカードで引き出せ」と言い、24時間稼働しているATMまで連れて行く。クレジットカードで支払いをさせると、後に警察が捜査した場合、カード読取用端末の情報から店が特定されてしまうことから、あくまで現金払いを求める。
⑧ 被害者が複数いれば、1名をATMに連行、残りの被害者を人質にする。ATMに同行した店員から代金受領の一報が入れば、解放する。
⑨ 店員が支払いを拒む被害者に暴力を振るう「暴力バー」も存在。また、飲み物に薬物を混入し、身ぐるみはがす「昏睡強盗」も稀に発生。
【実際に邦人が被害に遭った事件】
夕方、邦人男性観光客2人がヴァーツィ通りを歩いていると、若いハンガリー人女性2人が英語で道を尋ねてきた(手口①・②)。道案内の後、「あなたたち日本人?私、日本へ行きたいの」と切り出され、会話が盛り上がった。しばらくして女性らが、「良かったら近くのレストランで、もっとお話しませんか」と言うので、つい誘いに乗ってしまった(手口③)。
女性らは、「知っているお店はこの辺りのはずなんだけど。うろ覚えでごめんなさい」と申し訳なさそうに言いながら、5分ほどあちこち連れ回された。おかげで被害者は、元いた場所が分からなくなった(手口④)。
店に入るなり女性らは、「せっかくハンガリーに来たんだから、ハンガリー名物を試して」と言って、パーリンカ(アルコール度数40~50%の蒸留酒)を勧めてきた。被害者らは、調子に乗ってショットグラスで何杯も飲んでしまった(手口⑤)。
被害者らは、食事も女性との会話も大いに楽しんだ。しかし、食事後に4人分の代金として30万フォリントを請求されて青ざめた。「こんなに高いはずがない」と店員と押し問答が始まると、女性の一人は「飲み過ぎて気分が悪い。ちょっとトイレに行ってくる」と言って立ち去った。もう一人の女性も、「彼女を介抱しなきゃ」と言い残し、2人は二度と戻って来なかった。
被害者は2人とも手持ち現金がなかったので、「金もないし、払わない」と開き直ると、店の奥から大柄で強面の男が現れ、「クレジットカードがあるだろう。俺がATMに案内してやるから、一緒に来い」とすごまれた(手口⑦)。被害者の一人は、仕方なく友人をその場に残し、用心棒の様な男にATMまで連れて行かれた。途中で逃げ出そうかと思ったが、店に残した友人に何かあるとまずいと思い、渋々ATMで現金を引き出し、その場で代金を支払った。男はそこから店に電話したらしく、「お前の友人は今帰ったそうだ」と告げて立ち去った(手口⑧)。
被害者らは、すぐにお互いの携帯電話で連絡を取ったが、2人とも自分がどこにいるか分からず、ホテルで合流することにした。ホテルでフロント係にレシートを見せて事情を説明すると、「こんな店や番地は存在しない。場所を覚えているか」と聞かれた。しかし、被害者は土地勘もなく、かつ酔っ払っていたので、店の場所や名前が全く分からず、警察への届け出は断念した(手口①・④・⑤)。
【対策】
  • いかがわしい場所に立ち入らない。
  • 客引きの誘いには応じない。特に若い女性が話し掛けてきた場合、付近に多数いる男性の中で、何故自分に話し掛けてきたのか冷静に考える。
  • 注文前に、メニューに料金が書かれているか、妥当な金額かよく確認する。
  • 法外な請求をされた場合、携帯電話で警察や観光客用ホットライン(後述)に助けを求める。
ウ 自称ドイツ人大学教授による寸借詐欺
【事例】(過去の邦人被害の実例を類型化)
観光中、ドイツの大学教授を名乗る男が英語で、「一緒に観光しよう」「日本に行ったことがある」などと声を掛けてきた。世間話をし、ある程度打ち解けた頃を見計らって、「実は、今日中にドイツに帰国しなければならないが、財布を盗まれた。休日なのでドイツ大使館も閉まっている」等と窮状を訴え、帰国費用の借用を懇願してきた。
被害者は、男が「ドイツ人」「大学教授」というだけでまじめな人という印象を持っているところ、身分証明書と携帯電話番号を示され、かつ借用書も書くということで、完全に信頼してしまった。
その後、返済期日になっても自分の口座に金が振り込まれず、教えられた携帯電話もでたらめと判明した時点で、被害者は自分が騙されたことに気付いた。
【対策】
見知らぬ人に金を貸さない。
エ 睡眠薬窃盗
【事例】(過去の邦人被害の実例を類型化)
長距離バスターミナルで外国行きのバスを待っていると、「どこに行くの」と英語で親しげに話し掛けてくる若者がいた。意気投合したので、そのままバスでも隣同士に座って話を続けていると、若者は、バックパックからコーラのペットボトルを2本取り出し、「君もどうだ」と勧めてきた。断ると悪いと思い、喉も渇いていたので、コーラを受け取って飲んだところ、しばらくして急激に眠くなった。
目が覚めると、隣に若者の姿はなく、自分の手荷物が消えていた。
【対策】
見知らぬ人から提供された食べ物・飲み物は口にしない。
オ ヘイトクライム

人種的偏見や憎悪に基づく、いわゆるヘイトクライムについては、ここ6年間被害の報告がありません。過去には2件報告がありました。

ハンガリーにも、ナチズムを信奉し、私たち有色人種を敵視・蔑視する個人と団体が存在します。邦人が彼らに襲撃される事件は稀ですが、

  • 罵声を浴びせられた
  • 唾を吐きかけられた
  • 歩いていたら、足を掛けられた

といった事案は毎年発生しています。

【事例】
1件目は1997年、郊外電車(HÉV)に乗っていた留学生(男性)が、偶然乗り合わせたスキンヘッド集団から黄色人種であるとの理由で警棒で20回以上殴打され、全身打撲の重傷を負いました。
2件目は2006年、ブダペスト市内のビリヤード場において、旅行者(男性)が同じくスキンヘッド集団から黄色人種であるとの理由で、ビリヤードの玉で殴られたり、キューで首を絞められたりする暴行を受け、顔面骨折、咽頭軟骨損傷及び両足首捻挫の重傷を負いました。
【対策】
人種・国籍に関係なく、外国人から絡まれた場合は相手にすることなく、速やかにその場から離れて下さい。相手が前に立ちふさがる、唾を吐きかける、手や衣類を引っ張るなど、嫌がらせがエスカレートした場合は、直ちに警察に通報して下さい(107番又は112番)。
(5)騒擾事案対策

2006年9月には、反政府集会の参加者が暴徒化し、大規模な暴動に発展しましたが、それ以降、暴動は発生していません。

しかし、例年各種記念日、特に3月15日の独立戦争記念日及び10月23日の1956年革命記念日に行われる反政府集会やデモでは、意見の対立するデモ隊同士の小競り合いやそれを規制する警察との衝突が発生することもあり、注意が必要です。

そのような集会・デモに遭遇した際には、参加者に交じって記念撮影をするなど、興味本位で近付かないことが肝要です。

4 交通安全対策

当館ホームページ掲載の「交通安全の手引き」をご覧下さい。

5 緊急連絡先

(1)ハンガリーの緊急通報の問題点と対策
【問題点】
  • 外国語が通じない。
  • オペレーターの数が少ないため、通報が重なった場合、電話がつながるまで相当長い時間待たされることがある。
  • いわゆる「レスポンスタイム」(通報を受けてから警察官等が臨場するまでの所要時間)を計測する法律上の規定がないため、「一刻も早く臨場する」という動機付けがない。
【対策】
  • 緊急電話がつながらない場合に備え、最寄りの警察署や消防署、救急病院の代表番号を携帯電話に入力しておく。また、それらの場所も把握しておき、状況によっては直接そこに駆け込んで、助けを求める。
  • 緊急の通報に備え、簡単なハンガリー語を覚えておく。
  • ハンガリー語が話せ、かつ、いつでも連絡が取れる知人を数名確保しておき、緊急時には代理通報してもらう。
(2)緊急通報先

ア 警察:107

イ 救急:104

ウ 消防:105

エ 緊急用共通電話:112

112は、緊急通報のためのEU共通番号です。外国人がEU各国で、警察、消防、救急のそれぞれの番号を覚える必要はなく、加盟国内ではどこでも112に電話すれば事足りるという制度です。

ハンガリーもEU加盟後に112を導入しました。既存の緊急電話番号が併存し、暫定的に警察が運営しているなど未だ整備途中ですが、旧来の通報先に比べ、112に通報すれば、

  • 交通人身事故を起こした場合、警察と救急を一度に要請できる
  • オペレーター(警察官)は、英語と独語が話せることになっている(実情は「外国語を話せるオペレーターも中にはいる」という程度)

という利点があります。

(2)在ハンガリー日本国大使館

ア 所在地:1125 Budapest, Zalai u.7

イ 開館時間:午前8時30分~午後5時45分(月曜~金曜)

ウ 代表電話番号

(ア)開館時間:(06ー1)―398―3100

(イ)閉館時間の緊急連絡先:(06-1)328―5329

エ ホームページ:http://www.hu.emb-japan.go.jp/別ウインドウが開きます

(3)ハンガリー政府観光局による観光客用ホットライン

:(06-1)438―8080(英・独語で24時間受付)

観光施設、飲食店等に対する苦情受付のほか、犯罪被害にも一時的に対応。

6 緊急時の簡単なハンガリー語

(1)助けて
シェギーチェン(Segítsen

(2)動けない
ネム・トゥドク・モゾグニ(Nem tudok mozogni)

(3)警察を呼んで下さい
ヒーヴィヤ・ア・レンドゥールシェーゲット(Hívja a rendörséget!)

(4)救急車を呼んで下さい
ヒーヴィヤ・ア・メントゥート(Hívja a mentöt!)

(5)火事だ
トゥーズ・ヴァン(Tüz van!)

(6)日本国大使館
ヤパーン・ナジクヴェッチェーグ(Japán Nagykövetség

おわりに

日本人が被害者となる事件・事故を1件でもゼロに近付けるため、この機会に、在留邦人の皆様に3点お願いします。

1 在留届(変更届・転出届・帰国届)の大使館への提出

旅券法により、外国に住所又は居所を定めて3か月以上滞在する人は、在留届の提出が義務付けられています。在留届は、緊急事態発生時の大使館による安否確認や情報提供の基礎資料となりますので、未提出の方は、必ず提出をお願いします。

また、その性質上、登録内容は常に最新のものにしておく必要がありますので、お手数ですが、記載事項に変更のあった方は変更届、ハンガリー国外へ転出される方は転出届、日本に帰国する方は帰国届の提出をお願いします。詳しい手続については、当館ホームページをご覧下さい。

2 被害に遭われた場合の大使館への連絡

不幸にも犯罪被害に遭われた方は、ご面倒でも当館までご一報下さい。ご連絡いただいた情報は、個人が特定されないようプライバシーの保護に配慮した上で、当地邦人社会全体の安全向上に資するよう、本「手引き」の様な形で皆様に還元します。

3 家庭や職場、学校での情報共有

本「手引き」のほか、当館は「ハンガリー治安情勢」(月報)や「お知らせ」(随時)を始め、様々な安全関連情報をホームページに掲載しています。ご家族でハンガリーにお住まいの方や日系企業にお勤めの方、留学生の方は、これらの情報を是非、家庭や職場、学校で共有して下さい。

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