海外邦人事件簿|Vol.56 体力への過信が招く中高年者の災難

いわゆる団塊世代の方々が定年を迎えられることにより生じる社会的影響については、報道等でも大きく取り上げられています。今年、定年を迎える多くの方は、定年後の海外旅行を楽しみにされているのではないでしょうか。しかし、自分の体力を過信した無理な強行スケジュールで海外旅行をすると、命取りになることもあります。

『家族とともにパッケージツアーに参加した60代男性。ツアーはかなりの強行軍で途中疲労を感じたが、せっかくの夫婦旅行なので弱音を吐かずにツアーに含まれていた観光地を全て見学した。ツアー終盤の夕食時、本場の中華料理に舌鼓を打ちながら、今回の旅行で訪れた場所の話などで大いに盛り上がり、アルコール度数の高い現地のお酒もおいしく、何杯もお代わりをした。翌朝、ホテルのベッドの上で動かなくなっている男性の姿が夫人によって発見された。』

『美しい海で知られるアジアのリゾート地を訪れた60代女性。現地に到着したのは夜であり、身体も疲れ、重い感じがしたが、少しでも時間を無駄にしたくないと思い、翌日の早朝から沖合の島に出掛けてシュノーケリングを楽しんでいたところ、突然息苦しくなり、慌てたことも相まって大量の海水を吸い込んで意識を失った。島の監視員が気づき、浜辺に引き上げて人工呼吸を行ったが、ついに意識は戻らなかった。』

ホテルのベッドの上で動かなくなっている男性の姿が夫人によって発見された

『欧州の歴史ある建物や美術館を巡るツアーに参加した60代男性。限られた期間で多くの見所を訪れる過密スケジュールのため疲労が溜まっていたが、憬れの欧州旅行であったため観光を止めてホテルで休息する気にはなれず、旅行を続けていたところ、とうとう持病が悪化し、病院に緊急入院。片言の外国語を交えつつ漸く医師に自分の症状を伝え、手術を受けることとなった。手術後、日本と比べて高額な治療費を請求されたものの、所持していたクレジットカードに海外旅行障害保険が付保されていたため心配していなかったが、結局持病は保険の適用外とされ、自分で支払うはめになった。』

持病は保険の適用外とされ、自分で支払うはめになった

海外旅行中は、気持ちも昂ぶり、多少疲労を感じてもまだ大丈夫と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、日本では体力自慢の方でも海外では、食べ物や文化の違いなどから知らず知らずの間に身体にストレスが溜まりがちとなってしまい、その上、無理な旅行日程を強行しようとすると、身体に大きな負担が掛かり、思わぬ大きな事態を引き起こしてしまうこともあります。特に、中高年者の方は、可能な限りゆったりとした日程のツアーを選択する、あるいは、休息日を入れた余裕ある日程を立てるとともに、身体の不調を感じたら予定していた観光を諦めてでもホテルで身体を休め、大事を取ることが大切です。また、体調が万全ではないときには、食事にも気をつかい、過度のアルコール摂取は控えることも必要です。

せっかくの記念旅行も無事に帰ってきてこそ楽しい思い出になるということをお忘れなく。

(2007年2月19日掲載)

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