海外邦人事件簿|Vol.21 データが物語る日本人トラブル事情(その1)

外務省では、日本人渡航者のトラブル(事故、犯罪被害、犯罪加害、病気など)に際し、日本大使館・総領事館が何らかの対応を行った実績を「海外邦人援護統計」として取りまとめています。もちろん、この統計のみでは、日本人全体の海外トラブルの実態を映し出すことは困難ですが、「どのような地域で、どのような方々が、どういった犯罪に遭っているか」といった大まかな傾向が概観できます。これから3回にわたり、2002年の海外邦人援護統計をもとに、窃盗、強盗、詐欺などの財産犯罪に関する日本人の被害傾向についてまとめてみました。初回は地域別の被害傾向です。

1.全体~アジア、欧州が全体の74%
犯罪被害件数は概ね渡航者数に比例するようですが、同じく渡航者の多い北米やオセアニアと比べても、アジア、欧州の比率は高いといえます。
2.アジア~詐欺被害には要注意
アジア地域では、窃盗、強盗、詐欺の全てに注意が必要ですが、特に多発しているのが詐欺被害です。世界全体の日本人詐欺被害の77%がアジア地域で発生しています。特に複数犯による「いかさま賭博詐欺」や「宝石のキャッチセールス」はアジア地域特有の犯罪と言えるでしょう。「複数の人間がゆっくりと時間をかけて、観光客を罠にはめる」というのがアジア的犯罪の特徴です。
3.ヨーロッパ~電撃型犯罪が多発
欧州では、どちらかというとスリ、置き引き、引ったくりなどの瞬時に犯行を完結する手口が多く見られます。スリに限っては世界全体の62%、アジアの2倍強という数に上っています。特に、「話しかけスリ」「ケチャップスリ」(路上でいきなり話しかけたり、ケチャップ類を引っかけ、相手の隙をみてスリを実行)、「子供のスリ集団」(外国人観光客を集団で取り囲み、身動きできないようにしてスリを実行)などが、欧州で特に多く見られるスリの手口と言えるでしょう。また、路上でいきなり背後から襲って、強引に金品を奪取する「首締め強盗」「羽交い締め強盗」の類も依然として発生しています。
「ケチャップスリ」(路上でいきなりケチャップ類を引っかけ、相手の隙をみてスリを実行)

4.北米~車上ねらい
北米の各都市では、長期滞在者はもちろん、一般の観光客もレンタカーを使用する機会が多く、そのため「車上狙い」が非常に多いのが特徴です。世界の約40%の被害が北米地域に集中しています。
5.オセアニア~宿泊先での窃盗、強盗
オセアニア地域は、留学やワーキングホリデーでの長期滞在者が多いこともあってか、宿泊先での空き巣や侵入強盗が多く見られます。特に若者の旅行者の場合、ユースホステルやバックパッカーズ宿などの比較的安価な宿泊施設を利用していることが多いのも原因の一つと考えられます。
宿泊先での空き巣や侵入強盗

以上、各地域の特徴的な犯罪傾向をピックアップしてみましたが、ほとんどの犯罪は事前の知識と防犯意識があれば防げるものばかりです。「安全な旅行のためには、まず旅行先の情報入手から。」この大切さはデータ自身が物語っています。

(2004年5月31日掲載)

ページの先頭へ戻る