海外邦人事件簿|Vol.16 現金自動引き落とし機(ATM)に潜む罠

今や国際キャッシュカードは海外旅行者の必須アイテムになっています。国内に預金さえあれば、現金やトラベラーズチェックを持ち歩かなくても、海外で必要に応じて現金が引き出せる、また、旅先で所持金をすべて盗まれて一文無しになるというような危険もないので、海外旅行にはうってつけのものだと思われています。実際、現金を持ち歩くより遙かに危険は少ないと思いますが、数年前からこれらのカードを狙った犯罪も増えています。

『パリに観光旅行した29歳の女性。国際キャッシュカードで現金を引き出そうとシャンゼリゼ通りにある銀行のATMにカードを入れたところ、カードを入れたまま機械が動かなくなった。銀行は既に閉店しており係員も呼べなかったので、念のためカード会社にのみ連絡しておいた。ところが、帰国後に銀行預金残高がほとんど無くなったことに気付きカード会社に確認したところ、カードが出てこなくなって電話連絡をするまでの間に現金が引き出されたことが判明した。被害額約30万円。』

これを犯罪者の側から見てみましょう。  『ATMのカード挿入口に、ごく細い針金で細工をし、利用者が来るのを待ち受ける。利用者はカードを入れるが細工された針金に引っかかりうまく挿入されない。タイミングを見計らって、犯人は親切を装って近付き、「もう一度、暗証番号を入れてみた方がいい」とアドバイスをし、利用者が入力した暗証番号をチェックする。暗証番号を再入力しても当然機械は作動せず、カードも出てこないので、利用者は機械にカードが吸い込まれてしまったものと諦め、立ち去ってしまう。その後、犯人はカード挿入口の「仕掛け(針金)」を引き上げてカードを入手し、覚えた暗証番号で現金約30万円を引き出した。』

カードを入れたまま機械が動かなくなった

日本国内でも、過去にキャッシュカードにからんだ犯罪が起きていますので、海外が特に危険だという訳ではありません。しかし、ここ数年寄せられるようになったこの種の被害を見ると、カード会社の防犯対策よりも犯罪者の手口の方が勝っているようです。国際キャッシュカードのサービス自体は優れていますから、今後もさらに普及し、防犯システムも改善されていくでしょうが、それに応じて、犯罪手口も一層手の込んだものになっていくのが世の常です。

当たり前のことですが、こうした被害を防ぐには自らの防犯意識が最も頼りになるものです。「引き落としは銀行開店時間に」、「どんな場合にも他人に暗証番号を見せない」ちょっとした工夫で「自分の金は自分で守る」ことは可能です。

自らの防犯意識が最も頼りになるものです

(2004年4月12日掲載)

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