海外邦人事件簿|Vol.09 注意一秒、怪我一生

今年(2004年)はオリンピック・アテネ大会が8月に開催されます。日本代表選手の活躍が今から楽しみですが、その一方で心配の種もあります。日本を応援するため国内より大勢の日本人がヨーロッパにでかけることが予想されますが、試合のことに気を取られ身の回りがおろそかになり、犯罪者の恰好の餌食となってしまう方も多いのではないかということです。

そこで、今回は私共の心配が現実のものにならないことを願いながら、ヨーロッパで特に多い「スリ」にスポットをあて、日本人の被害傾向をご紹介します。

『パリ地下鉄を利用した30代男性。オペラ座駅のエスカレーターに乗ったら、すぐ前の男がタバコを落としたので拾おうとしゃがみこみんだ。その男を押し倒す訳にも行かず、行く手をさえぎられたまま気を取られている間に、後ろから来た別の男にズボンの後ろポケットから財布を抜き取られた。2人組のスリによる連携プレーであった。』

オペラ座駅のエスカレーターに乗ったら

『イタリアのローマ市内を観光していた20代女性。突然、街角で数人の子供に取り囲まれ、新聞を身体に押し付けるように見せられた。わけがわからず、また何を言っているのか判らなかったので聞こうとしたが、子供たちはすぐにクモの子を散らすように走り去ってしまった。持っていたハンドバックが開けられ財布が無くなっていたのに気が付いたのは、その直後だった。』

これらは典型的なスリの被害例ですが、スリの手が届かないよう自分の近くに不審な人物を寄せ付けないようにしていれば、防ぐことができました。例えば走って逃げたり、大声を出して不審者を追い払うことで被害に遭わずに済むのです。

街角で数人の子供に取り囲まれ

しかし、対策は比較的簡単なのですが、スリの手口も実に巧妙で人間の心理をうまくついてきますから、予備知識と心構えがなければ大抵の方は防ぐことができません。それにしてもいつもの満員電車に慣れているせいでしょうか、赤の他人が自分の身体に触れてもさほど気にしません。いや、気にしないようにしているのかもしれません。しかし、よく考えてみればわかりますが、さほど混雑もしていない場所で他人が自分の身体に触れて来るのは偶然か悪意かのどちらかしかありません。混み合う場所でもないのに身体に触れて来る他人には気をつけねばならないのが、海外では常識と考える必要があります。

「変だなと思ったら、確かめよう自分の財布と貴金属」

(2004年3月8日掲載)

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