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テロ・誘拐情勢

2016年12月31日

1.概況
 メキシコでは,国際テロ組織の活動は,現在のところ確認されていません。ただし,2015年11月にISILが発表した攻撃対象国リスト60カ国の中にはメキシコが含まれており,ISIL,またはそのシンパによるテロの標的となる可能性は皆無とは言えない状況にあります。これに対しメキシコ政府は,ISILの脅威は国際的現実であると捉え,国境,各国大使館,空港,港等の警備を強化する旨発表しています。
 その他,反政府組織は近年において活発な武装活動は行っていませんが,麻薬カルテル等の抗争による抗争・犯罪が発生しています。

2.各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)人民革命軍(EPR)
 1990年代に誕生した組織で,従来,治安当局及び米国権益を狙った攻撃を主としていましたが,2007年7月及び9月にメキシコ石油公社(PEMEX)のベラクルス州にあるパイプライン爆破事件等を敢行しました。メキシコ政府が断固として交渉しないという一貫した政策を取ったことで,EPRは武力行動を得策ではないと考えている模様であり,最近では目立った活動や,一般市民を巻き添えにするような行動はとっていません。
 一方で,EPRの分派である「反乱人民革命軍」(ERPI)は,2014年9月に,ゲレロ州イグアラ市において発生したアヨツィナパ教員養成学校生徒の行方不明事件に関し,行方不明生徒を襲撃した犯罪組織を粛清するための部隊を創設したと発表するなど,引き続き活動は継続しています。

(2)サパティスタ民族解放軍(EZLN)
 1994年にチアパス州で武装蜂起した組織で,近年は散発的な政府批判を中心に活動しています。テロ集団とは一線を画しており,テロ攻撃を行う過激性は有していないと見られています。ただし,2012年12月,チアパス州においてメンバー数万人による大規模なデモ行進を行い,2018年の次期大統領選において,既存の政党に属さない候補者の擁立を目指すとの声明を発表しました。

(3)その他
 「人民革命武装戦線」(FARP),「5月23日ハラミジスタ・コマンド」等といった組織が存在しますが,政府の機能を麻痺させるだけの力や,無差別テロや自爆テロ等を行う過激性は有していないと見られています。
 テロリスト・反政府組織による活動で主立ったものは確認されない一方で,複数の対立する武装した麻薬組織(いわゆる「麻薬カルテル」)による各組織間の銃撃戦や,政府機関・警察署等に対する襲撃等が頻繁に発生しています。主として北部国境地域や,太平洋側の主要港湾などで,各組織の利権をめぐる対立・抗争が発生しており,巻き込まれないよう日頃の情報収集及び警戒が必要です。

3.誘拐事件の発生状況
(1)全般的な傾向と対策
 メキシコ全土では,組織的犯罪として誘拐が横行し,身代金を目的としたビジネスとしても定着しています。2015年における誘拐被害届出件数は1,128件であり,前年比5.7%増加しました。ただし,上記はあくまで届出があった件数であり,国立統計地理情報院(INEGI)によると,2015年の総犯罪被害のうち約93.7%は被害届が提出されず,2015年は64,459件の誘拐被害があったとの推計もあります。地域別の発生状況としては,メキシコ州が最も多く,次いでタマウリパス州,ベラクルス州の順に発生件数が多くなっています。誘拐は,ほとんどが身代金を狙った営利目的誘拐であり,かつては警戒が厳重な富裕層が標的となることが主立ったものでしたが,最近は中流階級も狙われるなど標的が拡大しています。また,外国人が被害に遭うこともあります。
 誘拐犯は,犯行を行う前に必ず標的とする人物の事前調査を一定期間行うことから,自らの身は自ら守る心構えを持ち,危険度に応じた対策(通勤時の安全対策,住居の警備強化,日常行動上の注意等の総合的な対策)をとることが重要です。具体的には,目立たない(犯罪者は標的を選ぶ際,目立つ人物に目をつける傾向がある),行動を予知されない(行動のパターン化は,犯罪者の襲撃計画を立てやすくする),用心を怠らない(初心を忘れず,定期的に気持ちを引き締める機会を持つ,自分だけは大丈夫とは決して思わない)といった基本的な姿勢が求められます。また,自分に関する情報(身分・行動予定等)の秘匿に努めてください。特にSNS等インターネット上での個人情報の取り扱いについては十分注意してください。
(その他,対策についての詳細は「海外における脅迫・誘拐対策Q&A」( http://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_04.html )を参照してください)。

(2)短時間誘拐と偽装誘拐
 標的を絞って計画的に行われる誘拐の他に,標的を計画的に定めずに行われる「短時間誘拐(express kidnap)」,及び,実際は誘拐していないものの,誘拐を装って金銭をだまし取る「偽装誘拐(virtual kidnap)」があります。
短時間誘拐に関しては,メキシコ全国で発生しており,犯人はタクシー運転手を装い,あるいは無理やり車に乗せ,ATMへ連れて行き,キャッシュカードあるいはクレジットカードで現金を引き出したうえ,所持品を奪うという手段が多く見られます。当地では,ATMでの現金の引き出しに限度額としておよそ6,000ペソ(約300米ドル)の制限があるため,深夜0時をまたいで2度現金を引き出させるまで被害者を拘束したり,残高が少なかった場合には,家族にも金銭を要求したりすることがあります。流しのタクシー(Libre)が使用される傾向にあることから,タクシーを利用する場合には,流しのものではなく,予約制の登録されたタクシー(SitioあるいはRadio taxi)やホテル専属の観光タクシー(Turismo)等の利用をお勧めします。また,車両予約をした場合は運転手の氏名,車種,ナンバープレートの情報を事前に入手し乗車前に確認する等の対策にも留意してください。
 偽装誘拐に関しては,脅迫電話を受けた際は,犯人により示された被害者が実際に誘拐されているかどうか,事実の確認(生存確認)をまず行ってください。

4.日本人・日本権益に対する脅威
 現在,メキシコの反体制組織による直接的な脅威は低いものの,「反ネオリベラリズム」を唱え,米国系企業に対して反対しているグループが存在することから,日本企業を含む外国権益への脅威の可能性は完全には排除できません。
 近年,シリア,チュニジア及びバングラデシュにおいて日本人が殺害されたテロ事件や,パリ,ブリュッセル,イスタンブール,ジャカルタ等でテロ事件が発生しています。このように,世界の様々な地域でイスラム過激派組織によるテロがみられるほか,これらの主張に影響を受けた者による一匹狼(ローンウルフ)型等のテロが発生しており,日本人・日本権益が標的となり,テロを含む様々な事件の被害に遭うおそれもあります。このような情勢を十分に認識して,誘拐,脅迫,テロ等に遭わないよう,また,巻き込まれることがないよう,海外安全情報及び報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め,日頃から危機管理意識を持つとともに,状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

<2016年12月末現在>(注記)
 「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが,一般には,特定の主義主張に基づき,国家等にその受け入れを強要し,又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は,このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず,外務省が,報道等の情報等に基づき,海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり,本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。