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英国
テロ・誘拐情勢

更新日 2023年07月20日

1 概況
(1)イスラム過激派によるテロ
 英国を含む欧州は、引き続き、イスラム過激派又はイスラム過激主義に感化された者によるテロの脅威にさらされています。英国では、2005年7月のロンドンにおける連続爆弾テロ事件、2007年6月のロンドン及びグラスゴー空港における自動車爆弾テロ事件が発生した後、イスラム過激派による大規模テロ事件の発生は見られませんでしたが、2017年にロンドン及びマンチェスターで合計5件のテロ事件が発生して以降、2021年まで毎年テロ事件が発生しています。2022年は、イスラム過激派や過激思想に感化された者等によるテロ事件の発生は見られませんでしたが、英内務省による同年9月までの1年間の統計によれば、テロ容疑により前年と同様の190人の被疑者が逮捕されました。
 2021年10月にエセックス州リー・オン・シーにおいて発生した下院議員殺害テロ事件や、同年11月にリバプール女性病院の敷地内駐車場において発生したタクシー爆破テロ事件は、いずれもナイフや自作の爆発物を用いて被疑者単独で実行されたものと見られており、英国においては、引き続き、自己過激化した個人によるローンウルフ型テロが脅威として認識されています。
 さらに、従来、若い世代がウェブサイト、ソーシャル・メディア等を通じて過激思想に感化される危険性が指摘されていましたが、先述の英内務省統計によれば、逮捕者のうち18歳未満である者の割合が過去最高の16%に達し、テロ容疑者の若年化の傾向が現実のものとして懸念されるに至っており、社会経済活動がパンデミック以前の状態に戻り、人の往来も再び盛んになる状況も相まって、英国におけるテロの脅威は、ポストコロナにおける新たな課題を抱えながら継続しているといえます。
 英国のテロ攻撃に対する脅威度は、英政府により、「危機的(critical)」、「深刻(severe)」、「相当(substantial)」、「平穏(moderate)」、「低(low)」の5段階に設定されています。先述の2021年における2件のテロ事件が1か月以内に発生したこと等を踏まえ、2021年11月、それまでの「相当」から「深刻」に引き上げられましたが、テロの脅威が事件発生前の状態に戻ったとして、2022年2月、「相当」に引き下げられました。しかし、英政府によれば、「相当」は、引き続き高いレベルでのテロの脅威が継続しているものとされています。
 本脅威レベルは、2017年5月及び同年9月のテロ事件発生後、それぞれ数日間、「深刻」から最高度の「危機的」に引き上げられたほか、2020年11月から2021年2月までの間、予防的措置として、「相当」から「深刻」に引き上げられるなど、情勢の変化に応じて設定されています。
(2)北アイルランド関連テロ
 かつて北アイルランドにおいて、英国からの分離等に向けて過激な闘争を行っていたアイルランド共和軍(IRA )は、2005年の武装闘争放棄宣言以降、組織的な犯罪活動及び準軍事的活動を停止しています。また、ロイヤリスト系準軍事組織も、2010年中に主要な団体の武装解除が完了しており、目立った動きは見られていません。両派の和平路線の進展により、テロ情勢は飛躍的に改善されましたが、和平路線に反対するIRAの分派や独立系グループは、北アイルランドの警察官等の治安機関関係者等を標的としたテロを継続しています。
 北アイルランドにおけるこれら関連テロの脅威度は、脅威レベルの設定が始まった2010年以降、2022年3月に初めて上から「深刻」から「相当」に引き下げられたところでしたが、昨今の北アイルランド情勢を勘案し、「深刻」へ一段階引き上げられました。

2 各組織の活動状況
(1)イスラム過激派
 英国では、若い世代がウェブサイト、ソーシャル・メディア等を通じて、「アル・カーイダ(AQ)」 、「イラクとレバントのイスラム国」(ISIL) 等の危険な思想の影響を受けて過激化し、テロリストの支援活動やテロを実行することが懸念されています。また、シリアやイラクに渡航した英国人が、実戦の知識と経験を積んだテロリストとなって英国に帰国してテロを起こすことも懸念されています。
(2)北アイルランド関連過激派組織
ア アイルランド共和軍継続派(CIRA)
 組織内部における権力闘争を継続しているとされながら、治安機関に対するテロ攻撃を敢行してきました。メンバーは、脅迫、武装強盗、誘拐、密輸等広範な重大犯罪に関与しているとされ、2020年1月末、英国のEU離脱に合わせて爆発物を用いたテロ攻撃を計画したと報道されています(爆発物は発見、処理されたため爆発しませんでした。)。
イ 真のアイルランド共和軍(RIRA)及び新しいIRA
 2012年7月に、真のアイルランド共和軍(RIRA)の一部が北アイルランドの暴力的な自警団であるリパブリカン反薬物自警団(RAAD)及び独立系武装リパブリカン・グループと統合し、IRAと名乗る新たなグループ(便宜上「新しいIRA」という。以下同じ。)を結成し、主として治安機関に対するテロ攻撃を敢行しています。2022年11月、北アイルランド・ストラベーンにおいて、警察官2人が乗車する警察車両の脇に即席爆弾(IED)が仕掛けられ、当該車両が損傷したテロ事件が発生し(警察官2人に怪我はなし。)、北アイルランド警察は、本件が新しいIRAによるものである強い疑いがあるとの声明を発表したほか、新しいIRAが本件犯行を自認したとの報道が見られました。
ウ ロイヤリスト系準軍事組織
 近年目立った動きは見られませんが、2022年3月には、北アイルランド・ベルファストで行われた和解イベントにおいて、アイルランド外相の演説会場近くに、銃を所持した2人組の男により乗っ取られたバンが駐車され、車中から不審物が発見された事件が発生し(後に当該物件は偽物と判明しました。)、ロイヤリスト系準軍事組織の関与が指摘されています。

3 誘拐事件の発生状況
 英内務省の統計によれば、2021年度のイングランド及びウェールズにおける誘拐事件の発生件数は、6,905件(前年度比プラス21ポイント)であり、これに加え、16歳未満の子供に対する誘拐事件が1,026件(前年度比プラス7ポイント)発生しています(ただし、同統計では、路上において金品を奪うため被害者を人気のない場所に連れていくなど、本人の同意なく人を連れ去る行為を幅広く誘拐として計上しています。)。また、スコットランド警察によれば、2021年度のスコットランドにおける誘拐事件の発生件数は、260件です。
 なお、日本人を標的とした誘拐事件及びテロ目的の誘拐事件の発生は確認されていません。

4 日本人・日本権益に対する脅威
 テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアを始めとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
 近年では、単独犯によるローンウルフ型テロや一般市民が多く集まるレストラン、ショッピングモール、公共交通機関等のソフトターゲットを標的としたテロが世界各地で頻発しており、このようなテロの発生を未然に防ぐことは困難です。
 テロはどこでも起こり得ること、日本人も標的となり得ることを十分に認識し、テロ・誘拐に巻き込まれることがないよう、「たびレジ」、海外安全ホームページ、報道等により最新の治安情報の入手に努め、状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心掛けてください。

テロについて

「テロ」について国際的に確立された定義は存在しませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要する又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が報道等の情報に基づいて、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考として編集したものであり、本情報の内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。
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