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テロ・誘拐情勢

2016年03月30日

1.概況
(1)エジプト本土では、2013年7月の政変以降、大規模テロ事件が散発的に発生しています。2015年には、カイロ県内における検事総長殺害テロ事件(6月)、イタリア領事館付近における爆発事件(7月)、カイロ近郊の警察施設に対する自動車爆弾事件(8月)などが発生しました。
(2)また、規模は必ずしも大きくないものの、検問所や警察官個人に対する攻撃事案等が多数発生するなど、治安当局、軍、司法当局に対するテロ事件が多発しています。鉄道・電力等のインフラ施設に対する爆発事件等も発生しました。現在のところ、これらの事件は、夜間・早朝の時間帯に実行されることが多く、一般市民の被害者数は限定的ですが、一般市民の生活圏内で発生するものであり、注意が必要です。
(3)さらに、観光施設や外国人権益を対象としたとみられるテロ事件も発生しています。2015年には、地方観光都市ルクソールにおけるカルナック神殿付近での襲撃事件(6月)、カイロ郊外におけるクロアチア人誘拐殺害事件(8月)などが発生しました。
(4)シナイ半島においても、軍や警察を標的としたテロ事件が多数発生しています。ほとんどの事件は北シナイ県の北東部で発生しており、また、その手法は、路肩に仕掛けた爆弾で装甲車両を爆破したり、一般車両になりすました自動車爆弾により軍・警察関係施設を爆破したりと、巧妙な手口が用いられています。さらに、2015年10月、シナイ半島南部の観光都市シャルム・エルシェイク発のロシア旅客機が墜落する事案が発生し、イスラム過激派組織「ISILシナイ州」が犯行声明を出しています。

2.各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)「ISILシナイ州」(旧アンサール・ベイト・アル・マクディス(ABM))
 主にシナイ半島で発生している軍・警察に対する大規模テロ事件については、イスラム過激派組織「ISILシナイ州」が犯行声明を出しています。同組織は、シナイ半島北部を拠点とする「アンサール・ベイト・アル・マクディス(ABM)」が2014年11月にISIL(イラク・レバントのイスラム国)に忠誠を誓い、改称したものですが、シナイ半島のほか、エジプト本土における幾つかのテロ事件や上記クロアチア人誘拐殺害事件についても犯行声明を出しています。
(2)「ISILミスル(エジプト)」
 2015年7月以降、カイロ県内及びカイロ近郊で発生している幾つかのテロ事件について、「ISILミスル(エジプト)」との組織名で犯行声明が出されています。同組織の実態は必ずしも明らかでありませんが、同組織による事件の多くは、警察・軍を標的としたものです。その一方で、上記イタリア領事館付近における爆発事件に関しても犯行声明を発出しています。
(3)アジュナード・ミスル
 イスラム過激派組織であるアジュナード・ミスルは、これまでにカイロ及びその近郊において、外務省付近(2014年9月)、カイロ大学付近(2014年4月、10月、2015年3月)、アインシャムス大学付近(2014年12月)、ヘルワン大学付近(同年11月)等で発生した治安要員や大学警備要員に対する爆発事件を実行しています。しかしながら、2015年中旬以降、ほとんど活動はみられません。
(4)その他
 警察に対する攻撃事案や各種インフラ等に対する爆発事件等について、実態は不明ですが、「革命的懲罰運動」、「人民抵抗運動」と称する組織名で犯行声明が出されています。

3.誘拐事件の発生状況
 2015年には、カイロ郊外においてクロアチア人が誘拐される事件が発生し、「ISILシナイ州」が同人を殺害したとする犯行声明を発出しました。
このほかに外国人が被害者となった誘拐事件は確認されていませんが、都市部においては、エジプト人の児童が誘拐される事件が発生しています。

4.日本人・日本権益に対する脅威
 2013年7月の政変以降、これまでにエジプトで発生したテロ事件には、日本人又は日本権益を対象としたものはありません。しかし、同国では、軍、治安当局及び司法当局に対する攻撃、鉄道・電力等のインフラ施設等の爆発事件等が発生しているほか、観光施設や外国権益を対象としたとみられる事件も発生しています。
 さらに、近年、シリアやチュニジアにおいて日本人が殺害されたテロ事件や、パリ、ブリュッセル、イスタンブール、ジャカルタ等でテロ事件が発生しています。このように、世界の様々な地域でイスラム過激派組織によるテロがみられるほか、これらの主張に影響を受けた者による一匹狼(ローンウルフ)型等のテロが発生しており、日本人・日本権益が標的となり、テロを含む様々な事件の被害に遭うおそれもあります。
 このような情勢を十分に認識して、誘拐、脅迫、テロ等に遭わないよう、また、巻き込まれることがないよう、海外安全情報及び報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め、日頃から危機管理意識を持つとともに、状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

(注記)
 「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が、報道等の情報等に基づき、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり、本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。