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テロ・誘拐情勢

2016年04月18日

1.概況
(1)2014年6月末、イスラム過激派組織ISIL(イラク・レバントのイスラム国)が「カリフ制」を宣言して以降、イラク北部および西部において、同組織とイラク軍等及び米国をはじめとする「連合」との本格的な戦闘が続いています。
(2)ISILとの戦闘地域以外(首都バグダッド等)でもISIL分子による政府機関、治安機関、宗教関連施設、ホテル、マーケット等を標的とした爆弾テロ事件や犯罪組織等による誘拐事件が頻繁に発生しており、極めて厳しい治安情勢が続いています。
(3)クルディスタン地域北部の山岳地帯においては、クルディスタン労働党(PKK)に対するトルコ軍による空爆が続いています。

2.各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)2014年6月以降、 ISILは、ニナワ県モースル市、サラーハッディーン県ティクリート市及びアンバール県ファッルージャ市等を占拠するなどイラク北部及び西部を中心に勢力が拡大しました。これに対して、イラク軍等は米国主導の「連合」による空爆支援を受けながらISILの拠点に対する攻撃を行い、2015年4月にサラーハッディーン県ティクリート市、同年10月に同県ベイジ、同年11月にニナワ県シンジャール、2016年2月にラマーディーを解放し、同年3月からはモースル解放作戦を開始しています。ISILのイラク北部及び西部での支配地域は減少し、勢力の減退は見られるものの、イラク軍等に対して複合的な自爆攻撃を行うなど現在も激しい戦闘が続いています。
(2)各地域の治安情勢については、以下のとおりです。
ア 首都バグダッドにおいては、イラク治安部隊による厳重な警備体制が敷かれているバグダッド国際空港、インターナショナルゾーン及び両所を結ぶ幹線道路を除き、小規模な爆弾テロ事件等が頻繁に発生するとともに、数十人が犠牲となるような大規模な自爆テロ等も発生しています。
イ イラク北部のクルディスタン地域(エルビル県、スレイマニーヤ県、ドホーク県)においては、マフムール等エルビル県南部やニナワ県境付近等で、ISILとの戦闘が続いています。また、トルコ国境付近の山岳部では、トルコ軍がPKKに対する空爆を行っています。一方、エルビル市では、2015年4月の米国総領事館付近での爆弾テロ以降は目立ったテロ事件は発生しておらず比較的安定しています。
ウ 南部4県(バスラ県、ズィーカール県、ミーサーン県、ムサンナー県)においては、ISIL等による影響は限定的ですが、2016年4月にバスラ市内で車両を使用した自爆テロが発生し、「ISIL南部州」と称する組織が犯行声明を出しており、注意が必要です。また、部族間の対立による小火器を使用した小競り合いや犯罪集団による身代金目的等の誘拐が頻繁に発生しています。

3.誘拐事件の発生状況
 政治的な要求を行うために外国人を誘拐・拉致するケースや身代金目的で裕福なイラク市民を誘拐するケースが発生しています。バグダッド市においては、2015年9月にシーア派民兵組織が関与したと疑われるトルコ人労働者18人の誘拐事件、2016年1月に米国軍関係者3人の誘拐事件が発生したほか、犯罪集団による身代金目的等誘拐が頻繁に発生しています(2015年についても100件以上の誘拐事件が発生しています)。また、バスラ市においても、犯罪集団による身代金目的等誘拐が頻繁に発生しています。

4.日本人・日本権益に対する脅威
(1)イラクでは、過去に複数の日本人がテロや誘拐の被害に遭っています(2003年11月にティクリート近郊で日本人外交官殺害事件、2004年4月にファッルージャ近郊で日本人人質事件2件、同年5月にバグダッド郊外で日本人ジャーナリスト襲撃・殺害事件、同年10月に日本人旅行者人質・殺害事件、2005年5月に日本人襲撃事件)。
(2)バグダッドにおいては、爆弾テロ事件等が頻繁に発生しており、日本人がテロを含む様々な事件に巻き込まれるおそれは依然高く、非常に危険です。モースル市やファッルージャ市の奪還作戦の開始やそれに伴う国内避難民のさらなる増加などの影響を受け、今後治安情勢が悪化する可能性があります。イラク国内の治安情勢は、現時点で比較的安定している地域においても、引き続き十分な警戒が必要です。
(3)クルディスタン地域においては、クルディスタン地域政府は、ISILやYPG(シリアのクルド人民防衛隊)の戦闘員等になるためにシリアへ不法入国する外国人を警戒しており、不審な外国人に対しては拘束して取り調べを行うなど厳しい措置をとっています。こうしたなか、2015年2月以降、トルコやイランから陸路でクルディスタン地域へ入域した日本人が治安機関に拘束される事案が3件発生しています。

(注記)
 「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が、報道等の情報等に基づき、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり、本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。