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テロ・誘拐情勢

2016年04月01日

1. 概況
(1) マレーシアでは、2015年に入り,イスラム過激派組織ISIL(イラク・レバントのイスラム国)支持者の大量検挙,イスラム過激派組織アブ・サヤフ・グループ(ASG)やISILが構成員をサバ州やクアラルンプールに送り出すことを決定したとされる脅威情報,クアラルンプール市内でテロ攻撃を企図していた者や中東への渡航者の支援を行っていた者らが逮捕されるなど,テロ情勢は予断を許さない状況です。
(2) マレーシアは、銃器・火薬類に対する規制が極めて厳しく、また、国家の安全保障を害する行為についても「治安違反・治安対策法」(Security Offences (Security Measures) Act)、「テロ防止法」(Prevention of Terrorism Act)及び関連法令により厳重な規制が行われています。
(3) 一方、マレーシアは、タイ南部とは陸続きで国境を接しており、また、インドネシア、フィリピン等、国外からテロリストが侵入を企てるのに比較的容易な地勢状況にあります。空港、港湾等においては、2013年には、インドネシアの刑務所を脱獄したインドネシアを中心に活動するJI(ジェマ・イスラミーヤ)関係者がクアラルンプール近郊で逮捕される事件、2014年にはソマリアのアルシャバーブのメンバーが逮捕される事件、2015年にはスリランカのタミル・イーラム解放の虎(LTTE)の幹部メンバーが逮捕される事件などイスラム過激派の構成員が国外から侵入した事例もみられます。
(4)また,サバ州東側の島嶼部及び周辺海域及び同州東海岸一部地域においてはASGによる身代金目的の外国人誘拐事件が発生しています。

2. 各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1) 当局は、「治安違反・治安対策法」等に基づき、2013年2月以降、国内でテロを計画した者、ISILへの支援者やイラク等への渡航企図者等約150人を逮捕しました。当局による取締りは一定の成果を挙げていますが、ISILの脅威は増大傾向にあると考えられています。
(2) 2001年以降、当局はイスラム過激派組織の摘発に力を入れており、旧国内治安維持法に基づき、現在までにJIメンバー100人以上を逮捕しました。このため、マレーシアのJI指導組織は壊滅状態にあるとされ、現在、マレーシア国内でJIによる組織的活動は見られません。
(3) イスラム過激派クンプラン・ムジャヒディン・マレーシア(KMM、マレーシア聖戦団)についても、現在までにメンバー25名以上が逮捕されており、組織は壊滅状態とされています。近年ではKMMの元メンバーがISILの活動に参加したとして逮捕される事件が発生しました。
(4) 東マレーシア(ボルネオ島)のサバ州南東部ラハ・ダトゥ地区では、 2013年2月、「スールー王国軍」(Royal Sulu Sultanate Army)と称する武装勢力がフィリピン側から侵入し,同地区を一時占拠しました。これに対し、同年3月以降、マレーシア警察・軍による共同作戦が実施され、同年6月末、作戦終了が宣言されました。その後事態は沈静化していますが、武装組織はサバの領有権を引き続き主張しており、今後も同種事案の発生の可能性があります。また,サバ州東側の島嶼部及び周辺海域,東岸のうち,サンダカン,ラハ・ダトゥ,クナ及びセンポルナ周辺地域においては,フィリピンのミンダナオ西部を拠点とするイスラム過激派組織アブ・サヤフ・グループ(ASG)による外国人誘拐事件が複数発生しています。

3. 誘拐事件の発生状況
(1) ボルネオ島に位置する東マレーシア・サバ州東部沿岸域においては、身代金目的の誘拐事件が複数発生しています。2015年5月には、サバ州サンダカンの海岸部に所在するレストランにおいてマレーシア人2名がASGにより誘拐され,1名が解放,1名が死亡する事件が発生しました。過去にも、サバ州各地で武装集団による誘拐事件が発生しており、注意が必要です。
(2) マレーシア当局は、2014年からの誘拐事件の続発を受け、2014年7月19日から現在までサバ州東部海域に夜間航行禁止令を発令するなど、警戒を強化しています。この地域はフィリピンやインドネシアとの国境に近く、海岸線が長く警備にも限界があるため、同地域を訪れた日本人が被害に遭う可能性も排除できず、引き続き十分な注意が必要です。
(3) そのほか、クアラルンプール市街地においては,2013年9月に、、自動車で通学中の子供に対する誘拐未遂事件、11月には、外国国籍を有する幼児が誘拐される事件が発生しました。
(4) また、2005年3月には、マラッカ海峡において日本船籍のタグボートが海賊に襲われ、日本人の船長、機関長及びフィリピン人船員の合計3名が誘拐される事件が発生しています。

4. 日本人・日本権益に対する脅威
(1)現在のところマレーシアにおいては、具体的なテロの情報はありませんが、ISILの機関誌においてマレーシアに所在する日本の外交使節が標的の一つとして例示されるなど脅威が高まっています。
(2)近年,シリアやチュニジアにおける日本人が殺害されたテロ事件や,パリでの同時多発テロ事件等が発生しています。このように,世界の様々な地域でイスラム過激派組織によるテロがみられるほか,これらの主張に影響を受けた者による一匹狼(ローンウルフ)型等のテロが発生しており,日本人・日本権益が標的となり,テロを含む様々な事件の被害に遭うおそれもあります。
(2)このような情勢を十分に認識して,誘拐,脅迫,テロ等に遭わないよう,また,巻き込まれることがないよう,海外安全情報及び報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め,日頃から危機管理意識を持つとともに,状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

(注記)
「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が、報道等末現在の情報等に基づき、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり、外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。