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テロ・誘拐情勢

2016年04月01日

1.概況
(1)フィリピンでは、イスラム系反政府武装組織バンサモロ・イスラム自由戦士団(BIFF)、イスラム過激派組織アブ・サヤフ・グループ(ASG)や、共産系反政府武装組織である新人民軍(NPA)等が活動しています。これまで、イスラム系反政府武装組織やイスラム過激派組織は、政府部隊への襲撃、無差別爆弾事件、身代金目的誘拐事件等のテロ活動を、NPAは、「革命税」を徴収するという名目での企業や富裕層に対する恐喝等を、それぞれ行ってきました。
(2)また、東南アジア地域のテロ組織であるジェマ・イスラミーヤ(JI)の一部は、フィリピン南部ミンダナオ島やスールー諸島に拠点を有し、フィリピン固有のイスラム系反政府武装組織と連携しつつ、軍事訓練やテロ活動を行っています。
(3)近年、フィリピン最大のイスラム系反政府武装組織とされてきたモロ・イスラム解放戦線(MILF)は、フィリピン政府との和平プロセスを推進する立場であり,反政府活動等は控えていると見られています。しかし、2015年1月、ミンダナオ島マギンダナオ州ママサパノにおいて、比国家警察特殊部隊がマレーシア人テロリストらに対する法執行オペレーションを実施して撤収する際,MILF及び和平交渉に反対してMILFから分裂したBIFFの構成員を含む武装集団との間で交戦が発生し、警察側44名、MILF側18名、住民5名が死亡しました。
(4)また、中部ミンダナオではBIFFが政府部隊への襲撃を行う事件、西部ミンダナオではASG等による身代金目的誘拐事件が依然として発生しています。このほか、中部・西部ミンダナオでは、部族間の抗争も継続的に発生しています。さらに、NPAは軍・警察等に対する攻撃や事業者への襲撃を行うなどフィリピンのテロ・治安情勢については、引き続き十分な警戒が必要です。

2.各組織の活動状況または各地域の治安情勢
(1)バンサモロ・イスラム自由運動(BIFM)/(その武装部門)バンサモロ・イスラム自由戦士団(BIFF)
 BIFM/BIFFは、政府との和平交渉に反対し、MILFから離脱したイスラム系反政府武装組織であり、政府部隊への襲撃等を行っています。今後の和平プロセスの推移によっては、これらの反対派が勢力を拡大し、テロを含む反政府活動を活発化させる危険性があります。BIFFはインターネットのSNSを通じて恒常的にイスラム過激派組織ISIL(イラク・レバントのイスラム国)と連絡をとっていると主張しています。
(2)モロ民族解放戦線ミスアリ派(MNLF-MG)
 MNLF-MGは、イスラム系反政府武装組織モロ民族解放戦線(MNLF)の設立者であるヌル・ミスアリを信奉するグループであり、政府とMILFとの和平交渉に反対の立場と見られます。MNLF-MG は、2013年9月、西部ミンダナオ・サンボアンガ市に侵入して約3週間にわたって市民を人質にして立てこもる事件を敢行しており、今後も警戒が必要です。
(3)アブ・サヤフ・グループ(ASG)
 ASGは、身代金目的誘拐や爆弾テロ等を行うイスラム過激派組織です。国軍等による継続的な掃討作戦の結果、その組織は分断され、構成員の数も減少したとされていますが、ミンダナオ西部で継続的に誘拐事件を敢行し、多額の身代金を得てテロ遂行能力を保持していることから、その実力を過小評価することはできません。ASGは、ISILへの支持を表明しており,2014年9月、ドイツ政府がISILに対する米国の行動への支援をやめず身代金を支払わなければ人質のドイツ人2名を殺害する旨警告しました(同年10月に解放)。また,2015年9月に,ダバオ州サマル島において外国人3人を含む4人を誘拐したとみられています。
(4)ジェマ・イスラミーヤ(JI)
 JIは、フィリピン南部を含む東南アジア島嶼部で広域イスラム国家の樹立を目指す組織であり、中部及び西部ミンダナオにおいてその構成員やMILF、ASG等の構成員に軍事訓練を行ってきたほか、複数の爆弾テロ事件に関与してきたとされており、今後も、その動向には細心の注意を払う必要があります。
(5)新人民軍(NPA)
 NPAは、フィリピンの広い範囲に分布する共産系反政府武装組織であり、長年にわたり治安対策上の脅威となっています。2004年8月以降、米国による外国テロ組織の指定が更新されたこと等に反発して政府との和平交渉に応じてきませんでした。2011年2月にノルウェーで政府と和平協議を行うなど、その姿勢に変化の兆しが見えたところですが、その後再び交渉は行き詰まり、フィリピン政府と反政府共産勢力との間の和平プロセスは進展の見通しが立っていません。また、NPAは、軍・警察当局に対する攻撃、「革命税」等の要求に応じない事業者への襲撃等を行っており、今後もその動向には注意が必要です。

3.誘拐事件の発生状況
 フィリピン南部ミンダナオ地方を中心に反政府勢力等による誘拐事件が発生していることは上述のとおりです。フィリピン全土では、2015年に、38件の身代金目的誘拐が発生しており、その多くがマニラ首都圏を含む中部ルソン及び中部・西部ミンダナオで発生しています。一般に、フィリピンでは、外国人を含む富裕層が誘拐の標的とされることが多いとされています。

4.日本人・日本権益に対する脅威
(1)フィリピンのイスラム系反政府武装組織の中には、イスラム過激派組織ISILへの支持を表明している組織が存在しますので、今後,ISIL等によるテロの呼びかけに呼応し、これらの組織が外国人誘拐、テロ活動を活発化させるおそれがあります。また、NPAについては、これまでも日系企業に対し、恐喝や襲撃等を行ってきており、引き続き注意が必要です。
(2)近年,シリアやチュニジアにおける日本人が殺害されたテロ事件や,パリでの同時多発テロ事件等が発生しています。このように,世界の様々な地域でイスラム過激派組織によるテロがみられるほか,これらの主張に影響を受けた者による一匹狼(ローンウルフ)型等のテロが発生しており,日本人・日本権益が標的となり,テロを含む様々な事件の被害に遭うおそれもあります。
(3)このような情勢を十分に認識して,誘拐,脅迫,テロ等に遭わないよう,また,巻き込まれることがないよう,海外安全情報及び報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め,日頃から危機管理意識を持つとともに,状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

(注記)
 「テロ」については国際的に確立された定義は存在していませんが、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受け入れを強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものとされています。本情報は、このようないわゆる「テロ」に該当するか否かにかかわらず、外務省が、報道等の情報等に基づき、海外に渡航・滞在される邦人の方々の安全確保のための参考資料として編集したものであり、本資料の掲載内容がそのまま外務省の政策的な立場や認識を反映するものではありません。